いつも最高レベルの社員を顧客に張りつけられればいいのだが、実際にはそれは不可能だ。顧客の期待値をコントロールする必要がある。(写真:PIXTA)

お客様満足度を向上させる努力は正しい、しかし…

 前回の当連載で、「新卒社員には、入社2~3年目くらいの若手社員をインストラクターにつけよ」という話をしました。つまり、まだ右も左もわからない新人に対しては、管理職が教育しようとしても内容が高度になりすぎて、効果は薄くなる。インストラクターに本当にふさわしいのは、当人よりほんの少しだけ優秀な先輩社員なのだ…、と。

 「ほんの少しだけ優秀な先輩社員」に部下の教育をすべて任せれば大丈夫かといえば、それはもちろん違います。おおむね似たようなレベルの先輩社員であっても得手・不得手があるし、資質にもかなりの違いが存在します。たとえば、先輩Aの下についた若手社員は、お客様対応は優秀だが商品知識はいささか欠ける、先輩Bのもとにいる若手社員はその逆…、といったことが普通に起こります。

 人間は「環境の動物」である以上、これは当然のことです。しかし、だからといって放置してはいけません。この差は品質の差となり、部門の足を引っ張ることになるからです。

 これまでレベル3(最高レベル=10とした場合)の営業担当者からサービスを受けていたお客様に、ある日たまたまレベル10の社員が対応したらどうなるか。当然、そのお客様の満足度は大きく上がるでしょう。しかし中小企業は、中小企業であるがゆえにレベル10の社員を常に同じお客様に張り付けておくことはできません。いずれまたレベル3の社員が対応をする局面が必ず起こります。

 さあ、ではそのときお客様は「以前と同じレベルに戻ったに過ぎないのだから、まあいいか」と納得してくださるでしょうか? 残念ながら、それはまずあり得ないでしょう。一度“期待値”が上がってしまうと、なかなか元には戻りません。お客様は軽んじられたと感じて、以降は二度と買い物をしてくださらなくなる。

 理屈の上では「全社員をレベル10になるまで教育すればいい」ということもできますが、しかしそれは現実的ではありません。お客様満足度を向上させる努力をするのは正しいですが、お客様満足度が偶発的に「上がってしまう」事態は慎重に避けるべきです。