部下は、後輩に「教える」ことで自分自身も育つ

 このやりかたがいいのは、新人のみならず、教育係たる当の部下自身の成長も見込めることです。それはそうでしょう。曲がりなりにも先生なのですから、教育の過程で困難事が発生しても、いつものように知らん顔をしているわけにはいかない。「教え子」の前ではいいところを見せたい心理も働きますから、普段の仕事も一所懸命やるようになる。本人の能力も向上する。つまりは部門全体の人材の能力が底上げされることになるわけで、それはもちろん部門の業績にも好影響を与えることになります。

 恥ずかしながら私はこのことに長いあいだ気づかず、ために大きな無駄をしてしまったことがあります。以下にご紹介しましょう。

 もう10年以上も前のことになります。わが社は「ホームインステッド事業部」という部門を起ち上げました。これは家事全般を代行するサービスを提供するものです。共働きのご家庭も増えている昨今ですから需要は高いだろうと、私も大きな成長を期待していました。ところが思惑は外れました。辛うじて赤字は免れてはいたものの、業績は数年間ずっと横ばい。人材の定着率もあまり芳しいものではなかったのです。どうしてだろうと思って調べてみると、まさに人材の育成方法に問題があることがわかったのです。

 前述の通り、私はホームインステッド事業には大きな期待をしていました。そこで社内でも選りすぐりの人材を配したのです。ここまでは特に問題はありません。しかし当時の私は、そういう優秀な社員が一般社員を教育するとどうなるかということまでは思いが至っていませんでした。なにしろ「先生」は勤続10年、20年というベテランです。当然、部下への教育レベルや要求レベルも高くなる。

 一方の部下はといえば、そんな高度な教育を会得できるほどには成長していません。先生はいつまでも成長しない部下に苛立ち、部下は毎日のように上司に叱られて自信をなくす。部門の雰囲気は悪くなる一方。これでは業績が伸びるはずはありません。そこで人材の配置替えを行ない、新卒やそれに準ずる社員には入社4~5年目くらいの中堅社員をインストラクターにあてるようにしました。たったそれだけのことで見違えるように部門の空気は良くなりました。

 レベルの低い社員が、もっと低いレベルの社員を教育する。あなたはこのことに不安があるかもしれません。しかしわが社の事例でも明らかなように、実際はなにも心配する必要はないのです。

(構成:諏訪 弘)

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