会社は何もしなければ、5年で2割以上ものお客様を失う

 大都市およびその近郊では、住民はきわめて流動的です。簡単にいえば引っ越して出て行ったり入ってきたりが非常に多いです。わが社は半世紀に渡り、地域のご家庭にダストコントロール商品の配達・回収業務を行なっておりますが、その経験に照らしていえば、5年で2割以上もの既存住民がいなくなります。

 進学・就職・結婚・出産・転勤…。人生には多くの節目があり、その都度頻繁に人は動く。それはあなたが想像する以上にです。

筆者が経営する企業の商圏(都内)では、既存の住民は5年で2割以上が引っ越しなどにより圏外に転出していってしまう。人は入れ替わり社会は常に変化していく。(写真:rostislavsedlacek/123RF)

 これを前提にA社の話に戻します。

 地域密着型の経営をしているA社にとって、5年で2割以上もの住民がいなくなることは「5年で2割以上もの常連客を失う」こととほぼ同義です。もちろん転出した人数とだいたい同じくらいだけの転入もあるわけですが(地域の人口があまり変わらない場合)、しかし新しい住人はA社の店など知りません。もちろん店の看板くらいは目にするかもしれませんが、それだけではどの街にもあるただの「風景」です。入ってみる気にはなかなかならないものです。

 一方、別の新規店は、なんとかして売り上げを上げようと、必死で新聞折り込み広告を入れたり、街頭でビラまきをしたり、割引券をポスティングしたりします。すると新しい住民はどうしてもそちらに流れ、その店の常連となる。そうなるとA社の店に足を運ぶことはまずありません。これがA社が凋落した真の理由です。

 実をいうとA社は、メニューを改善したり、サービス品質を向上させたりといったことを、ライバル店と同様に熱心にやってはいました。その意味では変革を怠っていたと断ずることはできません。しかし「5年で2割以上もの固定客がいなくなる」ことには考えが及んでおらず、新しい2割(以上)の新規顧客を囲い込む営業努力は怠っていました。それが致命傷につながりました。「変化についていかなかった」からです。

地域で85%のシェアがあっても安心できない

 以上のことから、いったいどういう教訓が導き出されるでしょうか。

 答はひとつ。会社はどれほどお客様本意の経営をしていても(それがお客様に歓迎されていても)、新規のお客様を開拓していく努力を怠っていればやがて先細りになるという冷厳な事実です。

 いや、この際、端的にいいましょう。あなたが「現状維持ができれば御の字」などと甘いことを思っていたら──、当節はそう思ってしまうのも「やむなし」な状況も多々ありますが──、会社は倒産するのです。あなたは常にこういう危機感を持って仕事に当たってください。