子どものころの砂遊びを思い出してごらんなさい。あなたは砂山をつくっているのです。山がある程度の大きさになったら頂上を潰して裾野を広げないと、より大きな山はつくれなかったでしょう。仕事だってそれと同じです。どこかで失敗して、痛い思いをしてという経験をしないと、あなたはそれ以上には大きくなれません。もっと俗耳に入りやすいいいかたをするのならば、部長職にふさわしい人材にはなれません。

 もうひとつつけ加えるならば、社長は失敗はもちろん失敗として処断はするでしょうが、それ以上にあなたが「挑戦した」ということを評価します。そして必ず、挽回のチャンスをくれます。なぜなら社長は、失敗もしないがやる気もない部下よりは、多少失敗はしても意欲のある部下を重宝するものだからです。すなわち「挑戦する」ことは、失敗によるマイナスを補ってあまりあるものといえます。無謬がいいと思うのは、誤謬です。

管理職の器は「優秀な人材をどれだけ輩出したか」で計られる

 先のIくんにもう一度話を戻せば、彼は会議の場で私がなにか案件を持ち出すと、必ずすっと目線を伏せるのです。それは「社長、お願いですから、私には振らないでください」というサインなのです。他に「やります」という部下がいる以上、私としてはあえて彼に仕事を回す必要もないわけですが、だとすれば彼を課長職以上の職責に就かせることの積極的な意味もありません。

 社長は常にそういうふうに部下を見、引き抜くかどうかの判断の材料にしているのです。あなたはこのことをどうか忘れないでください。

 失敗し、挫折を味わいながら成長してきた管理職には、人間的な深みや魅力が出ます。それこそが部下を惹きつけ、モチベーションをかき立てます。ちなみに、あなたがいま以上の職責を望むのならば、そういう人材を一人でも多く配下に抱えておくことです。つまるところ管理職とは、優秀な人材をどれだけ輩出したかによってその器が計られるからです。

 以上、縷々述べてきたことを簡単にまとめるとこうなります。自らの力量を顧みず、「安請け合い」をすることこそがあなたの出世の糸口となる、と。

(構成:諏訪 弘)