部下をほめるにはコツがあります。「具体的」にほめることです。もっとも効果的なのは「数字」に基づいてほめることです。例えば、部下が商品を10個売ってきたとします。前回が8個なら、これは2個分のがんばりです。そこをほめるのです。「すごい、2個も増えたな。次は12個だね」という具合に。

 あなたの部下たちの平均売上が20個であっても、関係ありません。その社員個人としては伸びたのだから、ほめればいいのです。たとえ平均以下の売上個数であっても、当人にとっては新記録です。大切なのは、そのほめ言葉により部下に「がんばろう!」という気持ちを起こさせることです。そうやって一人ずつほめていけば、結局は全体の成績アップになり、ひいてはあなた自身の評価にもつながります。

 このときのほめかたでポイントとなるのは、「前回の自分(当人)」との比較をすることです。これは実績が下がった場合には特に有効です。10個を売った日の翌日の売上個数が7個に減ったとしましょう。これはほかならぬ自分の成果ですから、言い訳のしようがありません。素直に頭を下げ、次の巻き返しを約束せざるを得ないのです。

部下は「過去の自分」と比較されると黙らざるを得ない

 このように人間は過去の自分が挙げた数字を持ち出されて比較されると、ネガティブなデータでも素直に受け入れます。これを「営業所の中で一番下がった」などと、周りの社員と比較してはいけません。「あいつの営業ルートは楽だからだ」「やつは課長に贔屓(ひいき)されているからだ」などと、心の中にすぐに言い訳が浮かび、ふてくされてしまいます。それでは「がんばろう」という気持ちになれないのは当然です。

 子どものころ、兄や弟と比べて勉強しないとか、お手伝いしない、というような言い方で叱られると、叱られたことに対して反感を持ちませんでしたか? それは他人と比較されたからにほかなりません。

 上司が部下を指導する立場にある以上、正しいことや事実だけを素のままぶつけては仕事になりません。相手の性格によっては、見透かされない程度にホラや誇張も交えてほめたり叱ったりしなければいけないのです。

 要は「心理戦」です。ほんのわずかな言い方の違いで、部下の動きは一変します。部下が働かなければあなたの評価も下がるから真剣にやってください。とにかくあの手この手で自分以外の部下を動かすのは、管理職に課せられた重要な役目です。