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 「会長(劉氏)は尊敬できる経営者だが、仲間意識もある。もちろん数字には厳しいが、その数字を作るための方法には一切制約をつけない。我々の判断を尊重してくれます」

 その具体例がプロゴルファーとのプロ契約だ。

ゴルフ業界にはゴルフ業界の戦略がある(写真=PIXTA)

「フィーリング」は3Dキャドでは分からない

 「食品メーカーや家電メーカーならタレントを使ってテレビCMを流すが、ゴルフ業界は勝てるプロとどれだけ契約して、ツアーでの露出がどれだけあるかがベンチマークになる。業績も良くなってわが社もプロ契約を結べるようになり、その中から賞金王も生まれているが、選手選びには会長は一切口を出さない」

 具体的な数字は明かしてくれなかったが、契約金額は1人あたり数千万円、なかには1億円を超えるケースもあるだろう。女子ゴルファーではユ・ソヨン、ホン・シャンシャン、イ・ボミ、キム・ハヌルそして笠りつ子らと契約している。プロの意向を聞きながら徹底的にクラブの形状を調整していくことは、酒田工場の匠たちが最も得意とするところで、契約プロがツアーで優勝したり、賞金王になったりすれば、本間ゴルフの社員たちにとって最高の喜びにもなる。

 本間ゴルフはかつてパーシモンという素材にこだわり続けて、メタルウッドの素材革命で致命的に出遅れた過去がある、と冒頭に書いた。ところが今でも酒田工場ではクラブ開発のプロセスでパーシモンを使っている。

 いまやゴルフクラブは3Dキャドで設計するのが常識だが、いくら3次元といってもコンピューターの画面で見ている以上、限界がある。ゴルフクラブをかまえた時の微妙なフィーリングまではわからない。

戦略は親会社、実行は子会社

 だから酒田工場ではクラブ開発はまずパーシモンでモックアップ(模型)を作り、実際に職人がかまえた時に感じる僅かな誤差を、削ったり、粉を吹きかけたりしながら微調整をするのだ。そして完成したモデルのデータを3Dキャドに落とし込んでいくのである。こんなクラブ開発をしているのは「世界だけでも本間だけだ」と、本間ゴルフの中堅社員は胸を張る。

 中国人経営者の手腕で復活したHONMAだが、そのモノづくりの伝統は見事に息づいている。

 M&Aの成否はそれを仕掛けていく側の見識によって大きく左右されてしまう。金融業界屈指のM&A巧者によれば、買収は成立後の統合プロセスが最も重要で、「強固な信頼関係を構築できるか否か」がカギになるという。

 「戦略は親会社、事業計画の実行は子会社という役割分担になるが、親会社は『任せきり』でも『過剰介入』でもないバランスのとれた経営管理体制を早期に確立しなくてはならない。そのためには強固な相互の信頼関係の構築が不可欠だ」

 至言だ。

 それを劉建国氏は本間ゴルフで実現できているということだろう。