自社のノウハウが流出することを恐れたスシローの経営陣は、水産大手の極洋及び米系投資ファンド、ユニゾン・キャピタルとの業務・資本提携に活路を見出した。ユニゾンは敵対的買収者に対抗して、買収される側に立ち友好的な買収をする「ホワイトナイト」と呼ばれていた。しかし筆者に言わせれば、黒い猫も白い猫も同じ猫。投資スタイルに違いこそあれ、投資ファンドの本質は変わらない。企業の株式を安く買って、高く売る。目的はそれに尽きる。

 当時のスシロー経営陣が、その先に待ち受ける未来をどこまで理解していたのかは筆者にはわからない。ユニゾン・キャピタルは「あきんどスシロー」にTOB(株式公開買い付け)をかけた。第三者割当増資も実施したことで、ユニゾンが第3位株主となり、ゼンショーの持ち株比率を低下させた。

 一方、筆頭株主となったゼンショーは傘下の「かっぱ寿司」と「スシロー」との合併を画策していたとされるが、容易ではなかったようだ。両社が企業文化の違いを乗り越えることは難しかったとされる。

 スシローはゼンショー傘下から離れることができたが、経営は創業家を完全に離れ、TOBで株式を取得したユニゾン・キャピタルの傘下へと移り、会社も非上場化された。

「財務の安全性が著しく低下」

 たとえホワイトナイトと呼ばれようが、ファンドが未公開株を保有しているだけでは妙味はないはずだ。第三者に持ち株を転売し巨額のキャピタルゲインを得ることが、ファンドの主たる目的である。

 TOBの4年後の2012年9月、ユニゾン・キャピタルは持ち株すべてを英国系ファンドのペルミラ・アドバイザーズに売却した。

 ペルミラはLBOで使ったペーパーカンパニーと買収した「あきんどスシロー」とを合併し、新社名を「スシローGHD」とした。この時点でペルミラの出口戦略は、2つのうち1つだっただろう。第三者に高値で転売するか、再上場させるかだ。

 いずれにせよそのためには、スシローの企業価値を高めなければならない。業績伸長と競争力強化が絶対条件だ。ペルミラは、2015年に水留浩一氏(現社長)を起用した。外資系コンサルティング会社などで企業再生ビジネスのキャリアを積んできた人物である。水留氏はその期待に応え、業績は伸長し、2年後の2017年3月「スシローGHD」は東証一部に見事、再上場を果たし、ペルミラは持ち株を放出することで多額の利益を得た、と言われている。

 「スシロー」を売り買いしてきた投資ファンド側の目線に立てば、全員が大儲けでき、「スシロー」の企業価値は高まり、再上場までこぎ着けたのだから、いいこと尽くめだということになる。

 だが、そうとばかりは言えないと筆者は思う。企業の財務分析を専門とする SPLENDID21の山本純子氏は、一連の出来事により「財務の安全性が著しく低下した」と指摘する。

 「2012年にペルミラに転売以降は無形固定資産(のれん、ブランドなど)と長期借入金が爆発的に増え、財務の安全性が著しく低下しています。総資産に占める資無形固定資産の割合は67.6%で、純資産の318億円を遥かにしのいでいます」

 それは、どういうことか。