逆に、欧米の投資ファンドが日本企業を買収する時は抜け目がない。なかでもバイアウト専門の投資ファンドにすれば、用心の足りぬ日本企業は、まさに鴨ネギ(「鴨がネギを背負って来る」)と映っているのではないか。バイアウトファンドとは、投資家から集めた資金で業績不振の上場会社や未公開会社を買収して、企業価値を高めたのちに転売や株式上場によってリターンを得ることを目的としたファンドだ。

 なかでも彼らの利益を極大化させる手法がLBO(レバレッジド・バイアウト)だ。買収する相手企業の現金や不動産などの資産を担保に、買収資金を金融機関から借り入れ、買収完了後に、その借金を相手先企業に付け替えてしまうのだ。もっともLBOは中小企業の事業承継などにも大きな力となっており、LBO自体が悪辣な手段とは言えないが、使い方しだいでは悪魔のM&Aと化す。転売が繰り返されるたびに、投資ファンドは勝ち逃げしていくが、売られる企業の財務内容は急速に劣化していく。

増収増益見通し、業績好調なスシロー

 その典型的な例がすしチェーントップ「スシロー」の親会社であるスシローグローバルホールディングス(GHD)だ。2017年9月期の売上高は1564億円。2018年8月8日には連結売上高が前期比12%増の1750億円、連結純利益(国際会計基準)も12%増の78億円との見通しを発表、報道によれば、スイーツなどが好調で順調に売り上げも拡大しているとのこと。

 だが、それはあくまでもPL(損益計算書)上のお話。ひとたびBS(貸借対照表・バランスシート)に目を転じるとまったく違う顔が見えてくる。BS上では、「のれん」や「ブランド」など無形固定資産が膨張し、「借金漬け」の会社になっている。転売され続けた結果なのだが、なんとも残念なのは、そのきっかけを作ったのが“お家騒動”だったことである。

 スシローのルーツは、すし職人の清水義雄氏が大阪で開業した一軒のすし屋から始まっている。店は大いに繁盛し1984年、義雄氏は「すし太郎」を大阪府豊中市に立ち上げた。

 一方、弟の清水豊氏も同名の別の会社である「すし太郎」を大阪府吹田市で設立。業績は順調に伸び、1999年、二つの「すし太郎」は合併し、2000年に「あきんどスシロー」と社名を変更した。2003年にはついに東証2部に上場するまでになった。

 ここまでは絵に描いたようなサクセスストーリーなのだが、思わぬ“お家騒動”が勃発した。2007年3月に弟の豊氏と一部親族が所有していた持ち株を、牛丼「すき家」などを展開するゼンショー(当時)が取得してしまったのだ。日経ビジネス2017年4月17日号の記事によれば、ゼンショーが創業家の株式を取得するということを、当時の経営者は事前に知らされていなかったという。

 当時ゼンショーは回転ずしチェーン「かっぱ寿司」を持つカッパ・クリエイトの筆頭株主でもあり、まさに商売敵だ。その商売敵が「あきんどスシロー」の発行済み株式の27.2% を保有する筆頭株主の座についてしまったのである。

 ここから悲劇の幕が開ける。