だが地下水の環境基準は、70年間、毎日飲み続けても健康被害が出ないレベルに設定されている。「70倍」とはいえ、豊洲市場では地下水を使用することはなく、揮発したものを地上で吸引したとしても、健康被害はないという中西氏の指摘は説得力がある。

「リスクゼロ信仰」が強すぎる日本人

 しかし日本人は「リスクゼロ信仰」が強すぎる。ましてや「食の安心・安全」となればなおさらリスクゼロ信仰は教条的になってしまう。ただお粗末なのは豊洲市場のリスクに目を奪われるあまり、築地市場のリスクにはまったく目がいかないことだ。

 大気中のベンゼン濃度は豊洲市場よりも築地市場の方が高いという検査結果がでていることは気にならないのだろうか。築地は設備全体が老朽化し、極めて不衛生だ。大雨が降ると排水溝から汚れた水があふれることもしばしばで、夜中には大量のネズミがうごめく。そんな築地の実態の公表なしに、豊洲市場のリスクばかりを煽るのはいかがなものか。

豊洲市場を使えるようにするために

 では、豊洲市場を使えるようにするためには何をしたらいいのだろうか。ある土壌汚染の専門家は土壌・地下水の汚染処理と、建物の利用とを切り離して、市場としての安全性の検査を実施すればよいという。

 「土壌・地下水汚染の対応は専門家会議に任せて淡々と行い、それと同時に、豊洲市場の建物で使用するすべての水道水の蛇口の水質検査と、食品を扱う部屋で室内の空気汚染の調査を数か月間続けて、安全性を内外に示していくのがよいと思います」

 豊洲市場の建物の利用(室内環境、水道の安全性)と土壌・地下水を分けて収拾にあたる方法はきわめて現実的だ。もちろん、あわせて築地市場内の空気の汚染の調査、衛生環境についても調査をすればいい。

 専門家会議に丸投げし、政治ゲームばかりに興じているのではなく、一刻も早い豊洲市場問題の解決に、小池都知事自ら積極的に動くべきだろう。