「ジェネチカ研究所(味の素・ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社)は、今われわれにとって、とても大事な宝物なのですよ」

 味の素の伊藤雅俊会長がそう語るように、アミノ酸研究を中核に据えて事業構造の多角化を図る同社にとって、ジェネチカ研究所はまさに“宝物”になっている。1998年のロシア危機の最中に買いにいったからこそ手に入れることができたのだ。ちなみにジェネチカ研究所の資本金は2005年時点で、1億6616万ルーブル(約6億3142万円 1ルーブル3.8円換算)にすぎなかった。アミノ酸研究でヨーロッパ随一を誇る、90人を超えるロシアの頭脳集団を手中に収めた鮮やかさは日本企業には珍しい。

買収の本質はプライシング

 東芝のウエスチングハウスと味の素のジェネチカ研究所。一つの買収が企業の命運を分けることもある。

 戦略上必要な買収先の企業価値を正しく評価し、適正な価格で買収できるかどうか、それが問われている。いま日本では海外企業の買収ブームが続いている。買収すれば、売上や利益の足し算で単純に数字をかさ上げしてくれるし、株価も上がる。経営者にとって買収は手っ取り早く実績をつくる手段だ。しかし買収の本当の成否は5年、10年後に現れる。

 買収の本質はプライシングだ。これに尽きる。どんなにいい事業でも買収金額が高すぎればその買収は失敗に終わってしまう。