「宇治橋」を守る女神

京阪電車「宇治駅」を降りると、すぐ目の前に宇治橋が見えます。橋のたもとには能や狂言、吉川英治の小説「宮本武蔵」にも登場する茶店「通圓」があって、ゆったりと流れる宇治川とともに、歴史と自然が織り重なったような独特の雰囲気を醸しています。
宇治橋は646年(大化2年)に架けられたとされる橋です。「宇治の橋姫」はもともと宇治橋を守る女神で、橋姫を祭る「橋姫神社」が宇治橋を渡って徒歩5分ほどの所に鎮座しています。
橋姫神社の説明看板によると、ご祭神は神道の大祓詞に登場する神「瀬織津比咩(せおりつひめ)」だそうです。瀬織津比咩(姫)は天照大神と深い関係にあるといわれる水の神で、「橋姫」と同一視されてきたと考えても良いでしょう。さらに「交通の要衝として発展してきた宇治にとって、宇治橋はとりわけ大きな意味を持っており、橋姫神社を巡って数々の伝承を生み出しています」と書かれており、恐ろしい「橋姫伝説」については一切、触れられていません。
ただ、源氏物語宇治十帖「橋姫」の古跡と紹介されていたので、まずは源氏物語と橋姫がどのような関係があるのか探ってみました。
すると源氏物語の「橋姫」は、この和歌にちなんだものだとわかりました。
橋姫の 心をくみて 高瀬さす 棹のしづくに 袖ぞ濡れぬる
(橋姫のような淋しい姫君の心を察して、浅瀬にさす舟の棹の雫に袖を濡らすように、 私も涙で袖を濡らしております)
これは、源氏物語の薫が宇治に住む姫君たちに送った和歌です。これにちなんでタイトルが「橋姫」になったのだそうです。調べてみると、平安時代初期に編纂された「古今和歌集」に収録されている、詠み人知らずの和歌がベースになっていることがわかりました。
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