たばこ史を禁煙に応用してみよう

 こうしてみると、インパクトの強い広告戦略と、明治時代のニーズを先取りしたPR戦略の勝負だったようです。紙巻たばこが主流になったことを考えると、村井兄弟商会に軍配が上がったのかもしれません。

 その後、タバコに税金がかけられ製造販売が専売化されたことは周知のとおり。背景には戦争による財政的要請がありました。
 1898年(明治31年)、日清戦争後の財政を賄うために「葉煙草専売法」が施行され、1904年(明治37年)は日露戦争の戦費を調達するために「煙草専売法」が施行されました。
 これに伴い、斬新な宣伝合戦を繰り広げた「たばこ商」は姿を消すことになったのです。

 これまで日本のたばこ史を振り返りましたが、いかがでしたか?庶民にたばこが普及したキッカケが「たばこ商」の宣伝合戦だったことには驚きました。だったら禁煙も、効果的な宣伝で普及できるかもしれません。今、禁煙の風潮を受けて、禁煙グッズや禁煙ノウハウなどがたくさん登場しているのですから。

 たとえば、ニコチン置換療法により禁煙を助ける禁煙パッチ、また、現在(公社)地域医療振興協会のドクターたちが実施している医学的見地から禁煙に導く「らくらく禁煙コンテスト」にも、村井兄弟商会が「おまけ」に託した時代を先取りするPRコンセプトを活用すれば、さらに効果が得られるかもしれません。ちょっと考えてみましょう。

 たとえばAI(人工知能)を活用したらどうでしょう。「禁煙パッチ」に漏れなくついてきて、たばこに手を出そうとしたら「あなたの発ガン率は〇〇%高まります」などと科学的に警告してくれたら、たばこを吸う気も萎えそうです。医学的に禁煙をサポートする「らくらく禁煙コンテスト」では、さらに威力を発揮するでしょう。

 AIは今、介護やリハビリテーションの現場も含め、様々な分野に活用され始めています。禁煙サポートに活用される日も意外に早く来るかもしれません。「AIに監視されるくらいなら、気合でたばこ止めてやる!」というあなた、今のうちですよ。

◆参考資料

 JT 公式サイト「日本の歴史」
 「たばこと塩の博物館」公式サイト
 京都府、京都市歴史資料 など

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