トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都に認定する書面にサインした(写真:AFP/アフロ)
トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都に認定する書面にサインした(写真:AFP/アフロ)

 12月6日、トランプ米大統領が突然、エルサレムをイスラエルの首都とすると正式に認定した。さらには米大使館をテルアビブからエルサレムに移転するという。

 これはとんでもない話である。エルサレムは、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教という3つの宗教にとっての聖地である。そのために長い間、この地では戦争が繰り返されてきた。

 争いを回避するため、第二次大戦が終わった直後の1947年11月に、国際連合総会で「エルサレムおよび周辺地域を国際管理下におく」と決議された。

 1980年には、イスラエルがエルサレムを「永遠の首都」とする法案を可決したが、国連安保理は、イスラエルの首都法案は無効であり破棄すべきだと批判した。その後は、米国がイスラエルと中東諸国との仲介役を担っている。

 1995年には米国議会で、エルサレムをイスラエルの首都と認定する法律が成立し、大使館もエルサレムに移すという条項が盛り込まれたことがある。

 ところが歴代大統領は、エルサレムの問題をすべて先延ばしにしてきた。もし、こんなことを実行したら、イスラエルと中東諸国との対立に火に油を注ぐ事態になるからだ。

 エルサレムを巡る長い戦いの歴史を繰り返さないために、国連も世界各国もエルサレムをイスラエルの首都とは認めてこなかったのである。

 12月11日にニューヨークのマンハッタン中心部で爆弾テロが発生した。僕は、この事件はトランプ氏のエルサレム首都問題に関係しているのではないかと考えている。下手をすれば、今後も世界各国でテロが勃発する可能性がある。

ロシアゲート疑惑を紛らわすためのエルサレム首都発言だった

 トランプ氏はこれまでも過去の決定を覆すような決断をしてきた。今回のエルサレムの件についても、ティラーソン国務長官やマティス国防長官は大反対の姿勢を示している。それでも、トランプ氏は決議を強行した。

 なぜ、こんなことをやったのか。米国では、ロシアゲート疑惑を紛らわせるためではないかという臆測が広がっている。フリン前補佐官が虚偽供述罪を認めて検察に全面的に協力する姿勢を見せた。これによって、下手をすればトランプ氏の娘婿であるクシュナー大統領上級顧問にも捜査の手が及ぶ可能性が出てきたのだ。

 そんなことになれば、トランプ政権への悪影響は避けられない。国民の目をこの事態から逸らすために、トランプ氏は突然イスラエル問題を持ち出したのだろう。

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