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法務省は、入管法改正に反対だった

 さらに問題になっているのは、現在いる約26万人の外国人技能実習生の多くが、低賃金かつ劣悪な環境で労働を強いられていることだ。野党は、2015年から17年の間に、69人の外国人技能実習生が死亡していたと発表した。しかし、安倍首相は「今、初めて聞いた話だ」と言った。調査があまりにもずさんであると言わざるを得ない。

 僕は先日、経済学者の高橋洋一氏、日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩氏と話をした 。そこで「入管法改正について、もっと詰めるべきではないか」と言ったら、高橋氏は「法務省の中堅幹部らにこの法案について様々な疑問点を指摘すると、なぜか嫌がる。積極性がない」と言う。

 そもそも、なぜ国会での審議を焦ったのか。全く理解ができない。高橋氏によると「法務省は、外国人労働者を増やすことに反対している」という。法務省は、「規制」をしたい立場であり、規制緩和には反対。しかし、官邸筋から入管法改正を要請されているため、やらざるを得なかったのだという。

 地方の中小企業はどこも深刻な人手不足に苦しんでいる。58万人の労働力が足りないと言われているが、このままでは経営を維持することができないという声が上がっている。こういった状況を受けて、官邸筋が法務省に入管法改正を指示したようだ。

 法務省としては、「やりたくはないが仕方なくやっている」のである。法務大臣も、具体的なところをしっかり把握してないし、中身も詰められていない。19年4月に施行された時、法務省はどうするつもりなのだろうか。

 この点について、「法務省は全く責任を感じていない」という。官邸筋が詳細を詰めてくれると考えているようだ。外国人労働者の受け入れ拡大という極めて重大な問題が、双方、丸投げ状態なのである。

 将来の労働力のバランスがどうなるのか、予測が極めて難しい。5年後には145万人の労働力が不足するという試算があり、政府はこの5年間で最大34万人の外国人労働者の受け入れを見込んでいる。しかし、その数年後、あるいは数十年後には、労働力が余る可能性があるのである。ところが、その先の見通しについても全く触れられていない。5年後以降はどうなるのか、わからないのである。

 安倍首相は「移民政策ではない」と繰り返しているが、実質的な移民政策と言わざるを得ない。これは移民政策と言ってしまったら、背後にいる「応援団」から猛反発を受けるからだ。

 外国人労働者の増加による問題が起こってくる可能性は高い。人余りになった時にどうするのか。例えば、英オックスフォード大学と野村総合研究所との共同研究で「10~20年後には、日本で働く人の約49%の仕事がAIに代替される」という結果が15年に発表された。これに外国人労働者も入ってくるとなると、日本人の雇用はどうなるのか。賃金はどうなるのか。

 さらには「シンギュラリティー(技術的特異点)」という、AIが人間の知能を超えることを意味する言葉も注目されている。早ければ45年、遅くても50年にはAIが人間の知能を抜き、その頃には人類の仕事の90%が奪われてしまうという話もある。

 政府、あるいは法務省は、もっとこの問題を詳細に議論すべきではないだろうか。