そこでゴーン氏は縦割り意識を排し、全社員に情報が開示されるように構造改革を行った。さらには全社員に危機感が芽生えるように意識改革を断行した。その後、日産の業績は回復に転じたのだった。

 このような改革をしたにもかかわらず、今回、日産で再び問題が発覚してしまった。工場によっては1979年から無資格者が検査していたという。「危機感の浸透」は、ゴーン氏の改革でも困難だったと言える。

不正が始まったきっかけは、高度成長の終焉だった

 検査不正よりも、もっと深刻な問題がある。それは神戸製鋼や三菱マテリアルによる検査データの改ざんだ。

 これは、製品の品質自体が問われる問題だ。日本企業が世界から評価されていたのは、「品質の高さ」や「信頼性」である。その最大の強みを損なわせるようなことを平気でやったのだ。しかもそれを何年もやり続けている。神戸製鋼は、30年以上も不正を続けていたという。

 なぜ、こんなことをやってきたのか。原因は、やはり先に挙げた山本七平さんの「日本は空気の国だ」という言葉につながると思う。日本人は、空気を乱せば、その組織の中で生きていけない。たとえ不正を知っても、指摘すれば左遷され、出世コースから外れてしまう。こういった「悪い」仲間意識が、不正を引き起こしていると思う。

 大手製造業が不正を行うようになったきっかけは、高度成長の終焉だと僕は考えている。高度成長が終わり、企業は軒並みコストカットを始めた。従業員の数を増やすな。人件費を下げろ。検査資格のある従業員を雇うとコストがかかるから、無資格者に検査をやらせてしまう。

 できる限り安いコストで製品を仕上げたいから不正を行う。客に対しても「安くしますよ」と働きかける。客の方も、安いほうがいいと考えて購入する。

 それまでは、いかに品質を上げるかという点に注力していた。ところが高度成長期が終わり、企業がコストカットに舵を切ったところで不正が起こったのである。悪い仲間意識とコストカット体制が、大手企業を不正に走らせたと言える。

 こんなことを続けていれば、日本の製造業の信用は落ちていき、世界中からそっぽ向かれてしまうだろう。