トランプ氏は大統領ではなく経営者だ

 僕は、12日放送の「激論!クロスファイア」(BS朝日)で、河野太郎外務大臣と国際政治学者の三浦瑠麗氏を招き、米朝問題について議論をした。その時、僕は河野氏に「安倍首相は、米中首脳会談の展開を見て、不愉快に感じているのではないかな」と聞いたら、言葉を濁していた。

 繰り返すが、米中首脳会談の内容は、日米首脳会談とは相当異なっている。さらには、トランプ氏はベトナムで「私は頑張って、金正恩氏の友人になろうとしてみよう。それはいつかは実現するかもしれない」とツイッターで発言したことが話題になった。

 これは一体、どう考えれば良いのか。

 トランプ氏は、本当は大統領ではなくて、生粋の経営者ではないのだろうか。最近、米国内では改めて、皮肉としてこのように言われている。

 確かに、結果から見ればその通りだ。日本、韓国、中国では、ディールはうまくいった。日本には米国製の武器を買うことを了承させ、韓国には米国製の原子力潜水艦を買わせた。中国にも、28兆円もの米国製品を輸入するよう約束させた。

 特に、韓国は原子力潜水艦などを買ってどうするのか。原子力潜水艦とは、海上に上がる必要がなく広い範囲を動くためのものである。しかし、脅威の相手は隣国の北朝鮮だ。原子力潜水艦では、全く圧力をかけられない。

 これらはまさに、経営者として、米国の国益を最大限に優先した内容ではないか。一体、日米首脳会談とは何だったのかと思わざるを得ない。

 僕は、11日の「激論!クロスファイア」で、河野氏からこんな話をきいた。「米国の武力行使は、おそらく起きないだろう。おそらく、米朝の緊張関係は来年秋に控える米中間選挙まで続くのではないか」ということだ。

 緊張関係が続いた方が、トランプ政権としては有利だ。米国は今、ロシアゲート問題や雇用問題などが山積みである。米朝関係がクローズアップされれば、それらの問題は影が薄くなる。

 安倍首相にとっても実はプラスだ。北朝鮮という脅威が目の前にあると、外交で日本の存在感が大きくなる。トランプ氏、習近平氏、プーチン氏と友好的で自由に話せるのは、安倍首相くらいしかいないからだ。国内では、安倍政権の支持率が下がりにくい。これは自民党にとっても損ではない話だ。

 中国にとっても、大きなメリットがある。北朝鮮は、中国にとっての大事な外交カードだ。北朝鮮の崩壊は絶対に避けたいと考えている。28兆円の取引で北朝鮮への武力行使が避けられるのであれば、中国にとっては安いものである。

 つまり、北朝鮮問題は、トランプ氏のアジア歴訪によって少なくとも各国の政権にとって、ほぼウィン・ウィンの形で終わったと言える。

 問題は、北朝鮮がこれからどう動くかだ。中間選挙の前に、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するといった挑発をしかねない。やれば、米国も対応せざるを得ないだろう。

 ただ、核実験はしない可能性が高い。最近も核実験を実施していないが、これは中国が圧力をかけて抑えているからだと思われる。この後、北朝鮮がどのような行動に出るのかに注目したい。