想定外の展開になったアジア歴訪

 結果は、意外なものだった。中国はトランプ氏に対し、「国賓プラス」というレベルの異例の厚遇で迎えた。世界遺産の故宮を丸一日貸し切りにする大歓迎ぶりだ。

 しかも、トランプ氏が強調する米中の貿易不均衡問題に対し、習近平氏は「両国は2500億ドル以上の貿易契約・投資協定に署名した」と発表した。エネルギーや製造業などの分野で、総額2535億ドル(約28兆7800億円)の米国製品を買うという大盤振る舞いで応えたのだった。

 ところが、肝心の北朝鮮問題について、習近平氏は「安保理決議の全面的かつ厳格な履行を継続する」としか言わない。つまり、「圧力を強める」とは言っていないのだ。

 9月の国連安保理決議は相当抜け穴が多く、原油と石油製品の輸出は過去1年間の実績を上限に設定、つまり現状維持である。北朝鮮労働者の国外での雇用についても、現状維持だ。

 しかも、トランプ氏は習近平氏の発言に対して何の抗議もせず、理解を示したうえ、「中国は米国にとって非常に大事な国だ」とまで言った。

 もっと驚くべきことがある。習近平氏は、「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と発言した。太平洋を米中二大国で仕切るということである。

 これは、トランプ氏が進めようとしている「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは全く矛盾する。インド太平洋戦略は、中国への対抗策だ。

 ところが、習近平氏の「米中二大国で太平洋を仕切る」という発言を、トランプ氏は飲んでしまったようだ。

 想定外の展開は、まだまだ続く。11日の中韓首脳会談では、習近平氏と文在寅大統領との間で、北朝鮮問題について「対話による解決」を目指すことで一致した。米韓首脳会談とは全く異なる内容だ。

 10日にベトナムで行われた中露首脳会談では、習近平氏とプーチン大統領が北朝鮮問題に対し、中露が連携して対話による解決を目指すと表明した。

 さらにその後、日韓米の3 カ国合同演習の構想について、韓国側が拒否したことが明らかになった。

 どうも、背後には習近平氏の圧力があったのではないかと思われる。その前には、韓国の高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD」の配備について、中国が大反対していた。ところが、習近平氏と文在寅氏は、トランプ氏が訪韓する前に和睦している。

 韓国は、それだけ中国を恐れているのか、あるいは中国から圧力をかけられているのか。事実は定かではないが、少なくとも中国と和解する方がメリットが大きいと考えているのだろう。米国は、相当不愉快だろうが。

 以上のことを考えると、韓国、日本、そして米国までもが、習近平戦略にはまったのではないかと思われる。