北朝鮮の後処理は、中国に任せようとしている

 となれば、米国に残された道は、武力行使しかないのだろうか。

 10月27日、マティス氏は韓国を訪れ、文在寅大統領と面会した。そこで「朝鮮半島の非核化を成し遂げることを目指している」と述べている。つまり、米国は北朝鮮の核保有を絶対に認めないと念を押したわけだ。

 そこで、トランプ氏は日本に何を求めてくるのか。

 トランプ氏は、安倍首相に「米国が武力行使をする際は、日本に事前に伝える」と言ったという話がある。外務省と防衛省は、いよいよ武力行使が現実味を帯びてきたと戦々恐々としている。

 先日、僕は防衛省の高官に「結局、米朝問題はトップ会談になるんじゃないかな」と言ったら、「田原さん、それは甘い。そうじゃない可能性もありますよ」という答えが返ってきた。

 10月下旬、親日派のリチャード・アーミテージ元米国務副長官とジョセフ・ナイ元米国防次官補が来日した。その時、アーミテージ氏は「米国が北朝鮮を武力行使する可能性は、4分の1くらいある」と言ったという。

 今回のトランプ氏のアジア歴訪では、一部に習近平氏との対談で武力行使の後の話をするのではないかという見方がある。

 米国が想定する武力行使とは、爆撃によって金正恩とその側近たちを殺害することだ。できる限り一般市民を巻き込まないように配慮すると思われる。あくまでも、狙いは金正恩政権だ。

 では、その後はどうするか。おそらく、中国に「後処理」を任せるのではないかと思う。ポスト金正恩をどうするのか。北朝鮮の体制をどのように建て直すのか。そこを中国に一任する。この点を、今回の訪中で確認するのではないかと思う。

 米国は、北朝鮮を「第2のイラク」にはしたくないと考えている。

 かつて米国はイラク戦争を起こし、フセインを打ち負かした。ここでフセイン政権を倒せば、国民が安心して新しい政権をつくり、民主的なイラクが生まれると思ったわけだ。

 ところが、実際は違った。周知の通り、フセインを倒したらイラクは大混乱に陥った。日本のように、敗戦後に戦時中の体制を潰し、民主主義の国をつくろうとしたが、完全に失敗したのである。

 だから、金正恩体制を倒した後、北朝鮮の体制は中国に任せて混乱を回避するのがベストだと考えている。

 中国としては、北朝鮮という「外交カード」は手放したくないから、体制は維持したいだろう。ただ、コントロール不能となっている金正恩に対しては、不満を抱いている。金正恩は、中国と太いパイプのあった叔父の張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長も処刑してしまった。

 その点を考えると、習近平は、北朝鮮のレジーム・チェンジ(体制転換)には賛同するのではないかと思う。米国も中国の思惑を十分に分かっているから、後処理を任せようと持ちかける。

 今回、トランプ氏が訪中する目的の一つには、そういったすり合わせもあるのではないかと思われる。

 まずは、11月5日の訪日で、トランプ氏からどんなことが語られるのかに注目したい。僕としては、「武力衝突を了解せよ」という話にならないことを願っている。