従来は選挙の勝敗によって、トランプ氏の政策は大きく変わるだろうといわれていた。ところがここへ来て、勝敗に限らずトランプ氏の路線はほとんど変わらないのではないかとの見方が強まっている。
その背景にあるのは米中の覇権争いだ。
貿易競争に端を発した米国の中国に対する強硬姿勢については、トランプ氏に反発していた米議会、それから民主党までもが賛成しているのである。米国政府の方向性が統一され、「オールアメリカ」として踏み出しているというわけだ。
米メディアは、「米中による新しい冷戦が始まった」と報じている。僕もその通りだと思う。このため中間選挙の後、トランプ氏の勝敗に限らず、「米国ファースト」は強まっていく可能性が高い。
覇権争いはどこまでエスカレートするのだろうか。これが今、世界中が強く懸念しているところである。
安倍首相の「日中協調」に、外務省も困惑している
日本は米中戦争についてどう対応するのか。安倍晋三首相に近い人たちはこれまで「今こそ、日米関係を強化し、中国には強硬な姿勢を示すべきだ」と主張してきた。
ところが、10月26日に7年ぶりに行われた日中首脳会談では、安倍首相は「日中協調ライン」を打ち出した。「競争から協調」として、「これからの日中関係の道しるべとなる三つの原則を確認した」と発言した。
安倍晋三首相に近い人たちは、自らの主張と正反対の姿勢を安倍首相が示したことに困惑している。安倍首相も中国に対する強硬的な対応を主張するに違いないと思い込んでいたからだ。一方、安倍首相に批判的でこれまで「日中協調」を主張していた人たちも、安倍首相の発言に困惑している。
外務省も頭を抱えている。安倍首相が日中協調を示したことが想定外だったからである。 日中協調となれば、トランプ氏が不満を抱き、来年1月から始まる日米交渉が厳しくなるのではないか、との懸念もある。
日本の外交戦略はどのようにするのか。ここが、今の大きな問題である。
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