ただし、この矛盾を解消する前に、考えなければならないことがある。それは日米安保をどうするか、だ。

 日本の安全保障は、米国の後ろ盾が「抑止力」となっている。日本は米国の存在によって守られている。この点をどう考えるのかが、完全に抜け落ちてしまっている。日米関係を踏まえた憲法議論をしなければ、意味がない。

 1991年の冷戦終結後、安全保障について二つの意見が出た。

 一つは、日本自立論だ。冷戦中、日本の敵はソ連だった。日本に勝ち目はないから、米国に頼るしかない。しかし冷戦が終わってしまえば、米国の傘下にいる必要はなくなる。そこで、日本は米国から自立すべきだという意見が生まれたわけだ。主に野党がこのような主張をしていた。

 もう一つは、日米関係強化論だ。冷戦が終われば、米国は日本を守る必然性がない。このままでは、日本は米国に見捨てられる恐れがある。それを回避するために、日本は対米関係を強化すべきだ、という意見である。

 日本自立論と日米関係強化論は正反対である。日本政府は長い間、対米関係強化を進めてきた。

 冷戦後、宮沢喜一首相はPKO協力法を成立させ、自衛隊の海外派遣を可能にした。小泉純一郎首相の時代には、イラク戦争で海上自衛隊がペルシャ湾の入口で攻撃に参加する米艦船に給油をする活動をした。いずれも対米関係強化の一環である。

ドイツには参考になる点がある

 極めつけは、「集団的自衛権」を行使できるようにした安全保障関連法の成立だ。2016年9月、僕は安倍首相と面会した時、彼は「(安全保障関連法が施行されて)集団的自衛権を行使できるようになったので、米国は何も言ってこなくなった」と述べた。冷戦後、日米関係の強化が長い間続けられてきたのである。

 だからこそ憲法改正の前に日米関係をどうするのかという議論をしなければならない。ところが、誰もその議論をしようとしない。

 では、どうすべきか。ヒントとなるのがドイツである。僕は10年ほど前、ドイツの軍隊を取材した。ドイツは北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。ドイツは、NATOとしての集団的自衛権を認めているのである。ただし、個別での集団的自衛権は認めていない。ドイツの都合では戦争をしないということだ。日本も、ここから学ぶべき点があるのではないかと思う。

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