今は何よりも、米朝問題が最大の問題点であるはずだ。

 しかし、野党は米朝問題について全く触れていない。米国の武力行使を防ぐべきだとか、対話の道を探るべきだとか、あるいは、対話とは具体的にどういうことなのかといった対案が、もっと出てきてもいいのではないか。

 ところが、どの党も重点項目として消費増税や憲法改正を挙げている。2%の消費増税など、小さな話だ。先にも述べたが、欧州の20%という水準を考えれば、日本は低すぎるくらいである。

 憲法改正についても、極めて抽象的な話しかなく、議論する段階まで煮詰まっていない。

 最も直近の大問題であるはずの米朝問題について、選挙戦で全く出てきていないのだ。新聞やテレビなどマスメディアまでもが触れていない。そんな危機意識の低い国はあるのだろうか。

 一方で国民の多くは、米朝問題は深刻度を増していると認識している。万が一、米国が武力行使に踏み切れば日本にも被害が及ぶ可能性があると思っている。それでも、野党もマスメディアもこのテーマを扱わない。

 これは、どういうことなのか。

 おそらく、野党もマスメディアも、その話から逃げているのだと思う。特に野党は、この問題について全く考えていないのだろう。だから、米朝問題の対案を国民に提示することができない。

 政治家たちは、現状に対する関心が全くないのだ。いかに選挙で票を集めるか。どう安倍批判をするか。これしか考えていない。森友・加計問題よりも議論すべきなのは、米朝問題なのだ。

安倍首相が解散理由に米朝戦争を挙げなかった理由

 以前、「解散総選挙の理由は『疑惑隠し』だけではない」でも述べたが、安倍首相が解散に踏み切った理由の一つには、米朝間の緊張感が高まっている問題があった。

 安倍首相は、最近になってようやく北朝鮮問題について言及しはじめたが、解散当時は全く触れていなかった。

 これはなぜか。安倍氏の側近が「北朝鮮問題があるから解散するとは言うな」と安倍首相に言ったからだ。それを聞いた外務省の幹部たちはカンカンに怒り、「なぜ、出してはいけないんだ」と詰め寄った。

 側近は、安倍首相がそのように言ってしまうと、国民が危機感を持ちすぎて大事になってしまうかもしれないと危惧したのだろう。

 年末年始にかけて米朝問題はますます緊迫し、開戦に近づくのではないかという話もある。繰り返すが、それは11月のトランプ・習近平会談の結果次第だ。もし、本当に米国が武力行使に踏み切れば、日本では選挙どころではなくなってしまう。その前に、今のうちに解散総選挙をやって体制を整えておきたいというのが、安倍首相の「大義」だった。

 最悪のシナリオを回避するためには、日本は何をすべきか。あるいは、それが現実となった場合に、日本はどうすればよいのか。なぜ、選挙ではこの点が争点にならないのか。マスメディアもなぜもっと触れないのか。

 米朝問題をもっと前面に出し、野党は対案を出すべきだ。有事の際、最も危険に晒されるのは国民だという認識を持ってほしい。

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