なぜ、民主党は自民党と代わり映えがしなかったのか。それは、民主党もリベラルだから、自民党のやっていることと基本的には変わらなかったからだ。
今度の解散総選挙でも、その点が明確に示されている。自民党は消費税率10%への引き上げを行うと言うと、野党はみんな反対する。
ちなみに、欧州の消費税率は、総じて20%を超えている。10%になったところで、日本の消費税率は非常に低い水準なのだ。
つまり、自民党はバラマキをするが、野党はもっとバラマキをするということだ。
財政を健全にしようなどと考えている党は、どこにもない。日本に本当に必要なのは、リベラルではなく、保守なのだ。ところが、自民党のみならず、他の政党はいずれもリベラルで、いってみれば自民党の左側に、よりリベラルな政党が連なっている。これは大きな問題だ。
僕は、自民党が勝利した過去4度の選挙で、すべての野党の党首たちに「アベノミクスの批判など聞きたくない。あなたたちが政権を取ったら何をするのか。対案を出せ」と言ってきた。
しかし、4度の選挙で誰も対案を出せなかった。これが、野党が大敗した理由である。国民の多くは、アベノミクスに満足して自民党に投票しているのではない。野党に対案が出ないから、仕方なく我慢しているだけだ。今回の選挙も同様だ。野党に具体的な対案は出てきていない。
小池百合子氏率いる希望の党からは、「ユリノミクス」という言葉が出てきているが、中身はない。これでは支持など集まらないだろう。
一時は、自民党にとって希望の党は脅威だったが、小池氏が「排除の論理」を言い出した時から風向きが変わってきた。報道各社の選挙動勢を見る限り、自公で大きく過半数を取れるのではないかと思う。追い風が吹いているのは、枝野幸男氏率いる立憲民主党だ。30議席ほどとれるのではないだろうか。
議論すべきは消費増税でも憲法改正でもなく、米朝問題だ
今回の選挙において最も大きな問題は、米国と北朝鮮の間で緊張が高まっている問題について、どの野党も全く触れていないということだ。
11月初旬にトランプ米大統領が日本にやって来る。その前日には、トランプ氏の娘で大統領補佐官のイヴァンカ氏も訪日する。そこでトランプ氏は、日本に何を要求するのか。
トランプ氏は、その後に中国を訪問し、習近平国家主席と会談する。もし、ここでトランプ氏と習近平氏の間で、北朝鮮問題において何らかの合意ができなければ、米国は武力行使に踏み切る可能性が高い。
僕は、おそらく合意はできないと思う。武力行使が現実となった時、日本はどうなるのか。
当然だが、日本国内にミサイルが落ちる可能性もゼロではない。迎撃システムが配備されているとはいえ、その成功率は公表されていない。僕は、小野寺五典防衛大臣に「迎撃システムの成功率は何%か」と尋ねたことがあるが、「田原さん、それは勘弁してください」と回答を避けられた。
トランプ氏は武力行使に踏み切る際に、日本に集団的自衛権の行使を要求してくる可能性がある。
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