2002年に小泉純一郎首相が訪朝し、それをきっかけに2003年から米国、中国、ロシア、韓国、日本、そして北朝鮮の6カ国協議が開かれるようになった。これは、北朝鮮が核開発しないことを前提としていた。

 ところが北朝鮮は、その裏で核開発を継続していた。

 ロシアは当時、北朝鮮の核開発に協力していたとみられる。中国はその事実を知りながら、黙認していたのだろう。その結果、2006年に北朝鮮は核実験を実施する。「核開発をしない」という前提の6カ国協議を継続しながら、秘密裏に核開発を進めていたことが裏付けられた。

 2009年には、2度目の核実験を行った。要するに、北朝鮮は5カ国を騙した形になるが、ロシアはむしろ核開発の協力をし、中国はそれを認めていたのだから、結局のところ騙されたのは米国と韓国、日本だったわけだ。特に米国は大変腹を立て、北朝鮮に対する強い不信感を抱いた。

「政治生命を賭けた冒険」の中身

 僕が安倍首相に提案したのは、外交についてである。

 北朝鮮と米国の緊張が、非常に高まっている。最悪の事態を回避するために、日本政府がやるべきことは何か、という話だ。当時、僕が話した内容が一体何なのか話題になった。実は「政治生命を賭けた冒険」とは次のようなことだ。

 まず、安倍首相は米国に行ってトランプ大統領と会い、一体どういう条件ならば北朝鮮と話し合いをするつもりなのか、とことん聞き出す。これは最終結論じゃなくていい。北朝鮮と話し合いをする条件が何なのかを聞き出すのだ。

 ここを把握した上で中国に行き、習近平国家主席に会って「米国はこの条件なら北朝鮮と話し合いをすると言っているが、どうだろうか」と話を持ちかける。おそらく、中国は了承するだろう。

 次に、ロシアのプーチン大統領に会い、このことを話す。プーチン大統領も、米国が了承するなら承諾するだろう。

 韓国の文在寅大統領にも会って話をする。こうして各国の意向が一致した時点で安倍首相は北朝鮮を訪れ、金正恩と会い、「米国をはじめとする5カ国はこの条件であれば話し合いのテーブルに着くと言っているが、どうだろうか」と話を持ちかける。