米国が文在寅大統領の訴えに頑なに応じなかったのは、こういった経緯があるからだ。ちなみに、ここでいう「米国」とは、「トランプ大統領」ではない。米国政府全体としての意思だ。だからこそ、問題はより深刻なのである。

 2014、15、16年に行われた米韓合同軍事演習の際にも、北朝鮮はミサイルを打ち上げている。米国の「対話を拒否する」という姿勢に反発しているからだ。

 北朝鮮としては、ワシントンまで届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を完成させれば、いくら強硬的な米国も対話に応じてくれるだろうと考えている。

 ところが、実際は逆だ。本当に完成段階に入れば、その時点で米国は何らかの手を打つ。もちろん、それは対話ではない。武力行使という選択肢もあるだろう。

 確かに北朝鮮の行動は子どもっぽいものだが、このまま挑発合戦がエスカレートすれば、米朝衝突という最悪の事態を招きかねない。そういった意味で、北朝鮮だけを批判するのはいかがなものかと思う。

金正恩から折れることはない

 北朝鮮側から、米国に対話の姿勢を示すことはあり得ない。

 僕は過去二度、金正日政権の時代に北朝鮮を訪れたことがある。当時と比較すると、息子の金正恩は今ひとつ自信がないように見える。

 金正日は北朝鮮を完全に統括できていたので、硬軟両方の対応ができた。6カ国協議が実現できたのも、金正日に柔軟性があったからだろう。

 一方、金正恩は統括しきれてはいないので、側近を300人以上も粛清している。金正恩は強硬的な手段をとることはできても、柔軟性のある対応はできないのだ。

 もし、金正恩が他国と柔軟に対応しようとすれば、軍の反乱が起きる恐れがある。軍はミサイル発射に積極的だ。金正恩も、もはや「やめよう」とは言えないだろう。