石破氏は3つの問題を指摘

 石破氏が掲げる政策には3つの柱がある。1つは、森友・加計問題で損なわれた国民の信頼を取り戻すための「100日プラン」だ。安倍首相はこれらの問題に対し、「徹底的に調査し、全容を明らかにしてうみを出し切る」と発言していたが、そんなことは全くしていない。

 現に、森友・加計問題について報道各社が世論調査を実施したところ、「安倍首相の説明に納得できない」と回答した割合がいずれも8割近くに上った。このあたりも石破氏は考慮しているのだろう。

 2つ目は、「地方経済に軸足を置いた政策」だ。アベノミクスでは、異次元緩和、機動的な財政出動、成長戦略という3つの柱があるが、結局のところ借金財政に頼っている。人口減少が急速に進むなか、そのダメージを最も受けるのは地方自治体だーー。石破氏はこう主張している。

 地方の経済は急速に落ち込み、若い世代がどんどん都市部に流出している。出生率も落ち込み、過疎化がさらに進むという悪循環に陥っている。

 石破氏が地方創生担当大臣を務めていた当時、僕は彼にインタビューをした。そのとき、石破氏は次のように話した。「各県知事からは、主に2つの要望があった。1つは、国からの助成金が欲しい。もう1つは、大企業の工場が地方に来て欲しい」。しかし、いずれも実現できなかった。

 石破氏は今回の総裁選に向けて、「地方自治体が活性化しなければならない。そのためには、イノベーションが必要である」と述べた。今はインターネットの普及率が高く、都市部に住まなくても仕事ができる。こういった点も利用して、地方にイノベーションを巻き起こし活性化することはできないか、というのである。

 安倍首相は、こういった地方創生の議論を全くしていない。石破氏はそんな背景もふまえ、地方創生に力を入れたいと主張している。

 3つ目は、「慎重な憲法改正議論」だ。安倍首相は、次の国会で憲法改正を進めると言っている。しかし、共同通信が8月25、26日に実施した世論調査によると、安倍首相が秋の臨時国会に自民党改憲案の提出を目指す意向を示したことについて、「賛成」は 36.7%、「反対」は49.0%だった。このように反対の多いなか、石破氏は「憲法改正は急ぐ必要はない」と主張している。

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