さらに、財務省の責任者である麻生太郎財務相は、「なぜ改ざんしたのか、それが分かれば苦労はしない」とまで言った。さらには「どの組織でも、改ざんはありえる話だ。あくまでも個人の問題でしょう」と発言している。つまり、この問題について財務省は全く責任がないと主張したのである。
かつての自民党ならば、こんな発言をすれば、党内から大批判が出たはずだ。しかしこの時、自民党からは全く反対意見が出なかった。
明らかな嘘がまかり通っている
加計学園問題でも、安倍首相は獣医学部新設を検討する委員たちに「自分と加計孝太郎氏は40年来の友人だが、甘くするな」と言っておけば、何も問題は起きなかったはずだ。ところがたるんでいたから、「そんな話は知らない」と言ってしまった。
二人は40年来の友人で、毎年6~7回も食事をするような仲なのだから、知らないわけがない。僕は、獣医学部新設に関する委員たち(議員)と何人か会ったが、「なぜ安倍さんは、『加計氏は40年来の友人だが、甘くするな』と言わなかったのか」と聞いた。すると、委員たちは皆、「田原さん、なぜそれを早く安倍さんに言ってくれなかったんですか」と言った。
さらには、加計氏が岡山で記者会見をした時、「安倍首相と会ったという話は記憶にも記録にもない。事務局長が事を前に進めようとして愛媛県に言ったと報告を受けている」と発言した。独裁的な学園で、事務局長が勝手に話を進めようとすることなどあり得ない。
さらに新聞記者が「その事務局長の報告をいつ受けたのか」と質問すると、「覚えていない」と答えた。こんな馬鹿げた回答はあるだろうか。
これは安倍首相をだますことにも繋がる発言だ。加計氏の発言が事実ならば、当然、安倍首相に報告しなければならないが、報告していないという。そんなことがあるだろうか。
明らかな嘘がまかり通っている。本来ならば、こんなことがあれば自民党内から批判が出ても良いはずである。
自民党内が安倍首相のイエスマンで占められてしまったのは、かねてから主張しているように、選挙制度が中選挙区制から小選挙区制に変わってしまったことが大きな原因だ。中選挙区制だった当時は、自民党内に主流派、反主流派、非主流派があり、活発な議論が繰り広げられていた。自民党の首相が辞任する原因は、野党ではなく、党内の戦いに負けたことだったのである。岸信介氏、田中角栄氏、福田赳夫氏、皆そうだ。
こういった論争の土壌があった自民党こそが、日本のデモクラシーだったと思う。ところが選挙制度が変わり、今や自民党議員が皆安倍首相のイエスマンになってしまった。
例えば小泉純一郎内閣の頃は中選挙区制で、小泉氏の郵政民営化には党内からの強い反発があった。しかし今、そのような激しい論争は全く起こらない。これは、自民党の劣化だと言わざるを得ない。
Powered by リゾーム?