そこで、今回の一斉批判に話を戻す。

 トランプ氏は政策を進めていく上で、自身に反論するマスメディアを批判し始めた。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト等のマスメディアを「エスタブリッシュメントの提灯持ち」だとみなし、「フェイクニュースばかり流し、米国民を混乱させている」と宣言したのである。

 こうした中、ボストン・グローブ紙の呼びかけにより、300以上の新聞が「これは民主主義の危機である」と主張。言論の自由を守らねばならない、メディアは国民の敵ではない、というメッセージを一斉に国民に報じたのである。

 例えば、ニューヨーク・タイムズは「自由な報道は、あなたを必要としている」と題した社説の中で、「気にくわない真実をフェイクニュースと主張し、記者を国民の敵と呼ぶのは、民主主義にとって極めて危険である」と論じた。

 様々なマスメディアが一斉に「トランプ氏は極めて危険な大統領である」と主張した。これに対し、トランプ氏は「フェイクニュースのメディアは野党だ。米国にとって極めて良くない存在である。だが、我々は勝ちつつある」などとツイートした。

 トランプ氏は反論した上で、「フェイクニュースを流している新聞記者を排除する気はない」「記者を検閲する気はない」と述べた。ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席は、報道を徹底的に検閲して反対勢力を抑え込んでいる。この違いはとても興味深い。

自民党が劣化する日本の方がよほど深刻だ

 このような大論争が巻き起こっている米国に対し、日本はどうだろうか。日本の政治は、極めて危険な状態にある。

 例えば、韓国では2016年11月、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣を要求するデモが行われ、連日100万人が集結していた。僕は正直なところを言えば、朴槿恵氏はそれほど悪いことはしていないと思う。彼女は対人恐怖症的な面があると言われ、ようやく話ができる人物が「陰の実力者」と呼ばれる知人女性・崔順実(チェ・スンシル)氏だったのである。こうした背景から朴槿恵氏は、崔氏の言うことを何でも聞いてしまったというわけだ。

 朴槿恵氏に責任がないわけではないが、彼女一人が悪いわけではないと僕は考えている。それに比べると、日本の安倍晋三首相の行動の方がはるかに重大である。

 例えば、森友学園問題では、「もし私や妻が関わっていたら、総理も議員も辞める」と発言したが、そもそもそんなことを言う必要などなかった。この発言があったからこそ、財務省は慌てて決裁文書を改ざんし、大事になった。

 しかも、朝日新聞がこの改ざんを報じていなかったら、財務省は隠ぺいし続けていただろう。こんなことは、民主主義国家では許されないことだ。

次ページ 明らかな嘘がまかり通っている