AIで世の中はどこまで変わるのだろうか(写真はイメージ)

 人工知能(AI)は、これから社会、産業、仕事のあり方を大きく変えそうだ。日本企業は、近い将来やって来るAI時代に生き残ることができるのか。

 日本のAIの権威である東京大学の松尾豊氏は、次のように指摘する。「AIの最先端は、グーグル、アップル、マイクロソフト、アマゾンなど、いずれも米国勢であり、日本企業は3周ほど遅れている」

 理由の一つは、経営層の年齢だ。日本企業の場合、経営者ら意思決定者の多くは50~60代であるのに対し、米国のAI技術の最先端企業の経営者は、いずれも20代から出発している。

 二つ目は、日本の経営者がサラリーマン出身で、失敗をおそれ、守りの経営に徹していることだ。これに対し、米国のAI企業の経営者たちは、いずれも挑戦することに積極的だ。

 三つ目は、研究開発費の規模だ。なかなか環境が整わない日本に対し、米国では、グーグル1社で年間1兆4000億円だ。桁が違う。

 日本企業はこうした状況に危機感を持っている――。僕はここ1年ほど、AIの研究開発に取り組む日本の代表的な企業を取材してきた。

なぜ、日本ではなくシリコンバレーなのか

 まずは、トヨタ自動車だ。日本を代表する自動車メーカーは、AI分野の研究開発子会社をシリコンバレーに置いている。そのチーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)は米国人だ。

 なぜ、日本ではなくシリコンバレーなのか。トヨタ・リサーチ・インスティテュートCTOのジェームズ・カフナー氏に尋ねると、「日本にはAIの研究者があまりいない。一方、シリコンバレーは米国でも最もAI研究が進むスタンフォード大学に近く、研究者たちと協力しやすい。同じくAI研究の進むマサチューセッツ工科大学のあるマサチューセッツ州、ミシガン大学のあるミシガン州にも、トヨタの研究拠点がある」と答えた。

 トヨタは自動運転や電気自動車(EV)の実現を10年以内と想定していた。一方、米国、欧州、中国では、3~4年後にはEVが急速に普及するという見方がある。いずれトヨタも根本的に体制を変えなければ、時代の変化について行けなくなる。自動運転でも、すでに米国では路上運転試験を実施している。こちらも数年後には実現する可能性がある。

 トヨタは昨年末に大規模な人事異動を行った。社内の構造改革を行うことで、事業の転換を図ろうとしたのである。

 この流れと並行して、配車大手の米ウーバー・テクノロジーズが急成長している。ウーバーは日本でも本格的に事業展開する可能性がある。すると、自家用車を持つ人が減ってくるため、自動車メーカーは大きな壁にぶつかることになる。

 自動車メーカーとして今後、どのような戦略を打ち出していけばよいのか。それが現在の最大の課題だという。