真相を究明してほしかった

 その後、1995年3月20日に地下鉄サリン事件が起こった。なぜ、教団はこんなことをやったのか。

 僕はこの事件の後、幹部たちに話を聞くと、次のような話が出てきた。

 オウム真理教は1989年11月に坂本堤弁護士一家を殺害した。松本サリン事件でも、8人の死者が出た。ところが、警察はほとんど動かなかったのである。

 当時の警察は、宗教集団への捜査を非常に警戒していた。ところが、その後、公証人役場事務長逮捕監禁致死事件で、当時目黒公証役場事務長だった男性を殺害したところで潮目が変わる。ここで、ようやく警察が動きはじめたのである。

 教団内部には、信者として警察関係者がいた。教団に強制捜査が入るらしい──この情報を得た麻原元代表は、強制捜査をかく乱するために何をすべきかを画策し始めた。

 ただ、同年には阪神淡路大震災が発生し、警察内部では混乱が生じていた。そこで教団は、「パニックを起こせば、警察はそれにかまけて強制捜査をやらないのではないか」と考えたのである。

 パニックを起こそう、という言い出したのは、どうやら村井元幹部だったようだ。麻原元代表もそれに同意し、地下鉄サリン事件を実行することになったという。

 教祖の命令は、絶対である。幹部たちは、それに従った。要するに、地下鉄サリン事件の本当の目的は、警察の攪乱だったのである。極めてバカバカしい話だ。

 信者たちは皆、麻原元代表に気に入られようとして、どんどん過激な発言をするようになっていったようだ。

 逮捕後の麻原元代表は、まともに会話ができなくなるほどの混迷状態に陥り、裁判ができなかった。拘留中、彼は家族が訪れても、会わなかった。警察がどれだけ事情聴取をしても、真相は明らかにならなかった。

 一部では「麻原元代表は死刑を免れるため、演技をしていたのではないか」との見方もあったが、長い間そのような演技を続けられるほど、気の強い男ではないと思う。僕の質問にすら、まともに答えられなかったのだから。

 一連の事件について今思うのはやはり、真相究明をしてほしかったということだ。僕にはその思いが強い。