論争で感じたこと

 宗教とは、敵を作らなければ組織がまとまらない面がある、と僕は思っている。そして、オウム真理教では、そのターゲットを「米国」にした。米国が我々を攻撃してくる。だから、米国と戦うためにサリンを作らなければならない──そういった理屈で、サリンの開発を始めたのである。

 麻原元代表は、チベット仏教にも強い興味を示していた。「オウム真理教」という名称になってから、麻原氏はダライ・ラマ14世と接見し、これを教団の布教に利用した。

 信者たちは麻原元代表に認められようとして、必死に修行をした。修行とは、「死んだ後、仏になるために行う努力」であるという。

 そのうち教団は、「悪い人間は、自分たちが殺してやることで仏になれる」という思考を持った。そして彼らが誰かを殺害することを「ポア」と名付けたのである。

 ついに彼らは、自分たちを批判する坂本弁護士一家を殺害した。

 僕はこの事件の後、教団の道場で麻原元代表にインタビューをした。「あなたは神通力があるらしいね」と聞いたら、麻原元代表は「ある」と答えた。それから道場に空中浮遊をしている写真が飾ってあるのを見て「今、この場でやってみせろ。この場でできなければ、インチキではないか」と迫った。麻原元代表は困り、「ここではできない」と言った。この時、周囲の信者たちは、僕に襲いかかろうとした。

 次に、「あなた方が坂本弁護士一家を殺したとは言わない。ただ、もし、あなたに本当に神通力があるのなら、坂本弁護士一家の遺体がどこに埋まっているか分かるだろう。言ってみろ」と僕は麻原元代表に言った。言えないなら、神通力などないはずだと。

 その後、僕は信者たちに20分以上もの間、責められた。一方で、麻原元代表は僕の質問に答えられず、困り果てていた。

 二度目に麻原元代表と会ったのは、僕が司会を務める「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日)の出演時だ。宗教問題をテーマに、オウム真理教サイドは麻原麻原元代表ほか幹部らが顔を揃えた。

 この時、麻原元代表が「神の言葉が聞こえる」と言うので、僕は「神は何語で話すのか」と尋ねた。彼は、やはり答えられなかった。さらに僕は、「あなたの奥さんは、非常に贅沢な暮らしをしているようだが、神様はそのように言っているのか」、「あなたは、人間は生まれ変わると言うが、僕の前世は何だ」など、様々な質問を投げかけた。いずれも答えられないか、理解不能な回答だった。

 さらに、「ポア」について、「教団では悪い人間は殺せば成仏できるから殺すことは悪ではない、と教えているようだが、それはおかしいじゃないか」と言ったら、麻原氏は帰ろうとしたので、「戦線離脱して、逃亡するのか!」と僕は声を荒げた。彼は席に戻り、そこから再び論争になった。ここで僕は、意外と気の小さい男だなと感じた。

 先日亡くなった西部邁氏もこの番組に出演していたが、「オウムは真剣だ。だから怖い」と懸念していたのが印象的だ。