先にも述べたように、トランプ氏は中国に対する高関税について「安全保障上の脅威」が理由だとしている。なぜ中国が「安全保障上の脅威」なのか。僕はこの意味が理解し難く、様々な専門家に説明を求めたが、誰に聞いても意味はよく分からなかった。つまり「トランプ流の言い回しだろう」ということだ。

 もう一つ、挙げているのが「知的財産権の侵害」。米国企業が中国に進出すると、様々な技術が中国に盗まれてしまうという。今年3月、米国は世界貿易機関(WTO)に提訴したが、これに対し中国側は、そんな事実はないと反論している。

 様々な問題はあるものの、一つだけ明確なのは、トランプ氏の一連の措置は11月に控える中間選挙で勝つためであるということだ。

G7でようやくまとまった合意文書を全否定

 6月12日の米朝首脳会談の直前、6月8日から9日にカナダで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開催された。ここでは貿易問題を中心に議論され、安倍晋三首相はEU側と米国側との仲介にあたったとされている。

 最終的に、「自由、公平で相互利益になる貿易と投資は成長と雇用創出の主要原動力」と確認した上で、「関税障壁、非関税障壁の削減に向けて努力する」と宣言した。これはどちらかというとEU側の主張が認められた形だった。トランプ氏も承諾。その直後、米朝首脳会談のため中座してシンガポールへ発った。

 ところがシンガポールへ向かう機内で、トランプ氏は自身のツイッターで「自動車関税を検討するので、首脳宣言を承認しないよう政府担当者に指示した」と発言した。

 ツイッターでの表明は、日本では過小評価されがちだが、トランプ氏はツイッターを中心に自身の考えを述べている。例えば、ティラーソン元国務長官の解雇も、ツイッターで表明した。

 こうしてトランプ氏は、G7でようやくまとまった合意文書を全否定したのである。

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