「握手の瞬間」を米国のテレビ向けに設定したとの見方も

 そこで米朝首脳会談を実施し、北朝鮮に核廃棄を認めさせ、「屈服させた」と国民にアピールすることで、支持を集めようとしているのだ。

 今回の米朝首脳会談の開始時刻は、日本時間では午前10時で、米国東部時間だと夜9時にあたる。これは、トランプ氏と金正恩氏との握手の瞬間を国民に対してテレビでアピールしやすい時間帯に設定したという見方がある。

 今、世界中が懸念しているのは、トランプ氏が中間選挙に勝った後、北朝鮮問題はどうなるのかという点だ。もしかすると、トランプ氏は中間選挙の勝利さえ手にしてしまえば、ある程度満足してしまうのではないかという見方が広がっているのである。

 果たしてトランプ氏は、CVIDを本気で実現しようと思っているのか。実現する場合は、いつまでに決着をつけようとしているのか。ここが大きな問題である。ポンペオ国務長官は、トランプ氏の任期が終わる2021年1月までに実現したいという意向を示しているが、この点について北朝鮮の同意は得られていない。

 また、ポンペオ氏は非核化の決着がつくまでは米韓合同軍事演習は続けるとも強調した。世界に広がった不満と不安を抑えようとしたのだろう。

 一部の専門家たちは、完全に決着をつけるには、10年以上の時間がかかるだろうと主張している。本当に2021年1月までの約2年半で決着がつけられるのか。北朝鮮問題を単に中間選挙でのアピール材料としてしか捉えていないのであれば、完全な非核化までは漕ぎ着けないだろう。

 ここで日本が非常に心配しているのは、米国は大陸間弾道ミサイルの廃棄は主張しても、中距離ミサイルの廃棄には触れないのではないかということだ。要するに、米国は「本国にミサイルが届かなければいい」と考えるのではないか、ということである。

 日本政府の懸念材料は、これだけではない。トランプ氏は、「北朝鮮の非核化に伴う経済支援は日本や韓国が中心となる」と主張している。ただし、韓国は、それほど経済的に豊かでないから、膨大な金額の支援は難しい。つまり、経済支援の中核を担うのは日本なのである。

 今回の首脳会談で、北朝鮮の体制の保証と朝鮮半島の完全な非核化が共同声明に盛り込まれた。そこで、朝鮮戦争が終戦となる段階で、トランプ氏は日本に核廃棄に伴う経済支援を強硬的に要求してくる可能性がある。

 トランプ氏はどこまで本気なのか。日本にどこまでの負担を要求してくるのか。日本政府は、拉致問題や中距離ミサイルの問題が片付かない限り、経済支援はしないだろう。引き続き注目していきたい。