「好きなことしかしない」という働き方

 僕は先日、筑波大学の落合陽一助教とともに、同大学でシンポジウムのパネリストを務めた。彼はワークライフバランスという言葉に対して、「こんなものは古い」と言い切った。これからは、「ワークアズライフ(人生としての仕事)」という考え方を持つべきだという。

 つまり、「好きなことしかするな」ということだ。辛いと感じる仕事は辞めた方がいい。楽しい仕事をやるべきだと。極端なことを言えば、趣味も仕事も同じだという。

 また、堀江貴文さんも同じことを言っていた。先日、彼は「多動力」(幻冬舎)という本を出したが、その中で「我慢なんかするな」と述べている。一つのことをコツコツと続けるような時代は終わり、好きなことを好きなようにやればいいということだ。

 一見、それは落ち着きのないことのように見えるが、興味の湧いたものに手当たり次第取り組むことによって、どんどんアイデアが出る。この化学反応こそが、AI時代に向けての武器になるという。

 日本企業が付加価値の高い製品やサービスを生み出せなくなった原因は、チャレンジをしない「守りの経営」になってしまったからだと僕は思う。

 松下電器産業(現・パナソニック)の松下幸之助氏、ソニーの盛田昭夫氏、ホンダの本田宗一郎氏などの創業者たちは、皆、チャレンジ精神の塊だった。ところが、経営者が三代目、四代目になってくると、「攻めの経営」から「守りの経営」にシフトしてしまった。今、経営危機に陥っている東芝も、その原因は挑戦する精神をなくしたことではないかと思う。

 若い世代も安定志向が強まっている。先日、医療機関の会合に出席したとき、集まった大学病院のトップたちが、「留学する学生が減り、日本の医療レベルがどんどん落ちている」と口をそろえていた。

 昔は、大学医学部を卒業すると、医学の研究をするために留学する学生が多かったが、今は急減してしまったという。多くの学生たちは、医療技術の向上よりも、早く医者になって経済的な安定を目指すようになったからだ。

 以前も触れたが、最近の大学生が希望する進路の第一位は公務員だという。また、就職したい企業には条件が二つあり、一つは残業がないこと、もう一つはちゃんと休暇が取れることだそうだ。学生たちは、就職活動をする時、夜の10時に希望する会社に電話をし、社員が出たら「残業しなければならない会社だ」と判断して候補から外すという話もある。

 その一方で、変化を楽しむ若者たちもいる。僕はこれまで若い起業家たちを1000人以上取材してきた。彼らは、大企業で数年勤務した後に起業しているケースが多い。なぜ会社を辞めたのかと聞くと、一様に「ワクワクするような仕事をしたかったから」と答えた。大企業の仕事は、自分で意志決定ができないからワクワクしなかったと言う。

 彼らは起業することでアイデアを自由に実現できる土壌をつくり、革新的な事業で収益を伸ばしている。まさに、楽しみながら付加価値を生み出していると言える。ここから、AI時代に生き残る大事なヒントが得られるのではないだろうか。

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