60代の古い発想では波に乗れない

 AIは、スポーツと同じで20代半ばから30代前半の若い世代が中心に活躍する分野だ。それだけ柔軟な思考や発想を要するのだ。マイクロソフトの副社長だった西和彦さんを1980年代に取材した時、「マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏は、23歳という若さですでに活躍していた」という話を聞いた。若いからこそ自由な発想で活躍できるというのは、IT技術全般に言えることだろう。

 マイクロソフトのみならず、アップルのスティーブ・ジョブズ、グーグルのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンも、みんな20代で創業し、経営の意志決定をしていた。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグも、ハーバード大学在学中にSNSサイトを立ち上げた。

 一方、日本企業の多くは、20代や30代には発言権が全くない。彼らがどんなに素晴らしいアイデアや技術を持っていても、意志決定をするのは50~60代という発想の古い世代だ。これではAI時代の波に乗ることは難しい。

 各社がこぞって技術競争をする分野では、新しい技術で儲けたら、その大半を使ってさらなる技術開発をしなければ置き去りにされる。それでまた儲けて、開発に力を注ぐ。そのサイクルをどんどん回して事業を広げていくのだ。日本企業は、残念ながらうまくシフトできていないように見える。

 松尾さんによれば、AIのブレークスルーは、人間の脳の神経回路を模した「ディープラーニング(深層学習)」にある。そこで彼は、ディープラーニングなどの技術で優位に立つベンチャー企業30社の設立に協力している。「30社が波に乗れば、日本は大きく変わる」と自信を持って話していた。

 問題は、技術者の確保だ。例えば今、自動車大手各社が自動運転車の開発をしているが、技術者は米国から集めなければならないという。国内だけでは、自動運転に必要なAIに詳しい技術者が足りないからだ。

 2年前、トヨタは自動運転車の開発を進めるために、シリコンバレーに新会社を設立した。ホンダも、アルファベットの自動運転研究開発子会社ウェイモと提携し、共同研究をしている。その中心はいずれも米西海岸だ。

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