それでも安倍内閣の支持率が落ちない理由
僕は前川氏の発言の真偽だけでなく、文科省と内閣府のどちらが正しいかも分からない。ただ、与党のやり方は公平性に欠ける。そもそも与党は、本来一つの省庁の肩を持つべきではない。客観的な立場を保つためにも、文科省と内閣府の両方から距離を置き、独立した存在であるべきだ。
ところが、菅官房長官は内閣府の発言を信じている。なぜ、彼は内閣府側に立つのだろうか。これは国民の信頼を損ねる原因となり、政府としては結果的に「損」になるだろう。与党は内閣府から距離を置いた方がいいのではないか。
森友学園問題や共謀罪の問題、憲法改正の問題、安保関連法案の問題など、これまで様々な問題が議論されてきた。その都度、メディアや国民からは「安倍首相のやり方は強引すぎる」との批判が出ていた。しかし、安倍内閣の支持率はほとんど落ちていない。
なぜか。一つは、国内の雇用が大幅に改善しているからだ。失業率は3%台、有効求人倍率は1倍を大きく超え、先進国中でもずば抜けた水準である。
二つ目は、株価の水準が高いことだ。2017年に入ってから1万9000円台を維持している。国民にとって、経済が安定していることは非常に好ましい。
三つ目は、保守的な思想を持つ人が増えていること。特に若い世代が安倍内閣を支持しているようだ。今の大学生の多くは「公務員になりたい」と望んでいるという話をよく耳にする。よく言えば安定志向、悪く言えばチャレンジ精神に欠けていると言える。
もちろん、若い世代だけではない。AI(人工知能)研究の第一人者である東京大学大学院の松尾豊准教授は、「現状を変えたくない」という日本企業の保守的な姿勢が、AI技術において米国企業から大幅に遅れる大きな要因になっていると指摘し、「これは日本の危機だ」とまで言っていた。
「現状を変えたくない」という安定志向が強まっていることが、安倍内閣の支持率が落ちない原因に繋がっている。
以前も書いた通り(“茶坊主”ばかりの自民党が崩壊するシナリオ)、高支持率の維持によって「安倍一強」が鮮明になった自民党。今回の証人喚問でも、党内から反対の声が全く聞こえてこない。以前なら党内からの突き上げが必ずあった。
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