核をめぐる米国と北朝鮮の立場の違いを考えたとき、米国が「北朝鮮の核放棄」を求める一方で、北朝鮮は「朝鮮半島の非核化」を要求している。両者は似ているようで内容が全然違う。米国があくまで北朝鮮における核放棄を求めるのに対し、北朝鮮は韓国を含む朝鮮半島全体の非核化を求めているからだ。

 韓国には在韓米軍がいて核を持っている。つまり、北朝鮮が求めるのは、自国が核放棄をすると同時に、米軍の韓国からの撤退を求めることを示す。金正恩がこのところ二度にわたって中国を訪問。習近平国家主席と緊急会談したことから、朝鮮半島の非核化について北朝鮮と中国は意見が一致しているのだと思われる。

 米朝首脳会談が行われる場合、金正恩氏は最初の会談で核放棄を約束すると僕はみている。しかし、同時にそのための前提条件を詰めたい、と主張するだろう。1回目の会談はここまでだろう。そして、2回目の会談では核放棄の条件の一つとして、朝鮮半島の非核化、つまり在韓米軍の撤退を要求する可能性が高い。

在韓米軍の駐留費用を削減したいトランプ大統領

 それをトランプ大統領が受け入れるかどうか。日本政府としては、トランプ大統領はそんなことを受け入れるはずがない、と考えている。しかし僕は、受け入れる可能性はあるとみている。トランプ大統領は元々、在韓米軍の駐留費用を削減しようと考えていたからである。

 もしそれが現実となれば、日本にとっては大変な事態である。

 在韓米軍が撤退になると、その多くは日本に移動する可能性がある。つまり、米軍にとって朝鮮半島、中国、ロシアに対するアジアの唯一の拠点が日本になる。すると、在日米軍が強化されるだけでなく、自衛隊の強化にも繋がる可能性がある。これは、日本にとっては相当大きな問題になる。

 北朝鮮の要求は在韓米軍の撤退だけではない。北朝鮮は核放棄を「できる限り高く売りつけたい」と考えている。北朝鮮に対する体制の維持が保証されるのか。経済支援はどれだけ受けられるのか。核放棄と引き替えに、様々な条件を要求するだろう。

 だからこそ核放棄に至るまでの時間を稼ぎたいと考えるのも間違いない。核放棄をするということは、米国をはじめとする他国の査察を受け入れることになるが、これを何年以内に実現するのかも話し合うことになる。

 米朝首脳会談直前の6月7日にはトランプ大統領と安倍晋三首相による日米首脳会談が行われる。そこで安倍首相がトランプ大統領に念押しするのが拉致問題だ。既に両者による5月28日の電話協議で、安倍首相は拉致問題について伝えている。おそらくトランプ大統領は拉致問題についても言及するが、金正恩氏はどう反応するか。

 安倍首相はトランプ大統領の姿勢が変わってもそのたびに支持や期待を表明している。国内ではここ数カ月の間、森友・加計問題で痛烈な批判を浴び、国民からの信頼も失いかけている。支持率は下げ止まりつつあるが、拉致問題を進めることで信頼を回復したい面がある。

 さまざまな思惑が交錯するだけに、米朝首脳会談の行方に引き続き注目したいと思う。