トランプ発言を信じない理由

 さて、今回のミサイル発射実験の意図は何か。僕はやはり、金正恩氏は中国や韓国でなく、米国に対する意思表示をしたのだと思う。

 具体的には2つの意図がある。一つは、「トランプ氏の言う『適切な状況下であれば、北朝鮮と会談する』という言葉は信じていない」ということだ。北朝鮮は、ミサイル実験を繰り返すことで、米国に「本音を言え」と迫っているのだ。

 実のところ、トランプ氏が5月1日に「適切ならば北朝鮮と会談する」と発言したことについては、トランプ氏自身も困っているのだろう。米大統領報道官は、マスコミから「これはどういう意味か」と問われた時、答えられなかった。それどころか、「現時点で、こうした要件が満たされていないことは明白だ」という否定的な発言をしている。

 日本を含めた世界各国は、「トランプ氏のこの発言は戦略的発言ではなく、思いつきの発言ではないか」と捉えている。過去にも同じことがあった。例えば、昨年の選挙戦でトランプ氏は「金正恩氏が米国に来るのなら、ハンバーガーを食べながら対話をする」と述べたが、共和党の幹部たちから徹底的に批判されて発言を撤回した。

 北朝鮮がトランプ発言を信じない理由は、これだけではない。トランプ氏はそういった発言をしながらも、原子力空母「カールビンソン」を日本海に展開する威圧行為をしている。

 僕らから見ても、発言と行動に矛盾がある。カールビンソンを展開させたのは、ただのパフォーマンスなのか。本当に武力行使が近いとなれば、まず駐韓米国人を退避させるだろう。そういったことを北朝鮮は察知して、「まだまだ米国は本気ではない」と捉えているのだと思う。

 2つ目のメッセージは、「今後もミサイルの発射や核実験をどんどんやる。北朝鮮を馬鹿にするな」ということだ。8、9日に行われたノルウェーでの米朝非公式協議を踏まえ、「米国は米朝会談について、もっと本気で考えろ」と促すためにやっているのだと思う。

 金正恩氏は、父である金正日氏とは発想が全く違う。正恩氏は強気一点張りだ。なぜかというと、弱気になれば幹部たちの不信感が生まれるからだ。正恩氏は今まで200人以上を粛清してきたから、強気でいかなければ反乱が起こりかねないと考えているのだろう。