
これまで北朝鮮は、約70回ものミサイル実験と5回の核実験を行ってきた。特に金正恩体制に入ってからは、その頻度を上げている。それに対し、これからアメリカはどう出るのだろうか。
僕が注目しているのは、オバマ政権時代から東アジア・太平洋担当の国務次官補を務めていたダニエル・ラッセル氏の言動だ。彼はクリントン時代も国務次官特別補佐官を務めていて、民主党にとって重要な役割を果たしていた人物である。
彼は、昨年10月12日にワシントンで安全保障を担当する記者たちを集め、次のように述べた。「金正恩が核攻撃を企て得る能力を持ったら、即座に彼は死ぬことになる」。
さらに、北朝鮮が核開発において一線を超えた場合のアメリカの反応について3つの可能性を示した。1つは軍事介入。2つ目は先制攻撃。3つ目は指導者の暗殺、つまり金正恩・朝鮮労働党委員長を消すということだ。特に、ラッセル氏は3つ目の選択肢に力を注ごうとしていた。
興味深いのは、トランプ大統領の反応だ。共和党のトランプ氏が大統領に当選した時、当然のことながらオバマ政権時代の幹部たちを総入れ替えしたわけだが、その中でラッセル氏だけは留任となった 。
それはなぜか。トランプ大統領は、ラッセル氏の主張に非常に賛同しているからだ。ここまで言えるだけのラッセル氏の力と情報収集能力を、トランプ大統領は相当買っていたのではないだろうか。その後、ラッセル氏は3月8日付で辞任をしたものの、留任を指示したトランプ氏の意向は、今後の対北戦略を図るうえで重要なものだと思う。
なぜ、金正男氏の長男は「40秒の動画」を公開したのか
2月12日の安倍・トランプ会談の最中、北朝鮮がミサイルを発射したという情報が入った。発射されたミサイルは、「北極星2型」という新型の中距離弾道ミサイルだった。この実験が意味するものは、北朝鮮がついに、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発の最終段階に入ったということだ。ICBMが完成すれば、北朝鮮からアメリカを直接攻撃することができる。これは非常に大変なニュースだ。
しかし、この報道は1日にして消えてしまう。翌13日、金正恩氏の異母兄・金正男氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺されたからだ。白昼堂々と遂行された犯行で、まるでスパイ映画のような派手な状況の中での出来事だった。
その後しばらく経ってから、さらに興味深い出来事があった。3月8日、金正男氏の長男、金漢率(キム・ハンソル)を名乗る男性の動画がインターネット上に公開されたのだ。40秒ほどの動画の中で、その男性は「父は数日前、殺害された」という声明を出した。
なぜ、彼はわざわざこんなことをやったのか。
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