さらに15日も、籠池氏は日本外国特派員協会での会見を延期した。実は彼は、同日の午前中に上京している。マスメディアの記者たちは、彼が東京に来れば、おそらく財務省か国土交通省に行くだろうと推測し、両方を張り込んだのだが、籠池氏はどちらにも現れなかった。

 この日、籠池氏は誰に会ったのか。相当影響力の強い人物、おそらくは政治家に会って、何らかの圧力をかけられたのではないかと思う。

 そのあたりまでは、言ってみれば自民党の説得が効いていた。しかしその後、籠池氏は安倍さんに対して真っ向から喧嘩を売る形になった。

 野党は、以前から籠池氏の国会招致を要求していたが、これを安倍さんや自民党が拒否していた。ところが、100万円寄付問題が表沙汰になると事態は一変する。

 野党が求めていた「国会招致」。一般的に考えれば、まずは参考人招致からだと思われていたが、突如、自民党サイドが「証人喚問」をすると言い出した。

 参考人招致と証人喚問は、全く「重み」が違う。参考人招致というのは、何を言ってもいい。嘘を言っても、答えなくても許される。一方、証人喚問は、嘘を言えば偽証罪で罰せられるのだ。

 証人喚問の話が出たことについて、一番驚いたのは野党側だろう。参考人招致を拒否し続けていた自民党が自ら「証人喚問をする」と言い出したからだ。自民党の幹部たちからも「なぜ証人喚問になったのか」と驚く声も上がっている。

 これを誰が決めたのか。自民党の中で僕が取材した限りでは、どうやら安倍さん本人が言い出したという。なぜ、これまで参考人招致すら拒否していた安倍さんが、証人喚問をやると言い出したのか。

 安倍さんは籠池氏が売った喧嘩に対して相当怒りを感じたのではないかと僕は思う。籠池氏と安倍さんの間には、「対立」などという生易しい言葉では言えないほどのことが生じたのではないか。

今回の100万円寄付問題は、かつての「偽メール事件」とは違う

 籠池氏が「安倍首相から100万円の寄付を受けた際の書類だ」と主張する振込票について、「それは本物なのか」「信用できる証拠なのか」と疑う声も出ている。特に民進党は慎重な姿勢を見せているという。

 それはかつて、民主党がライフドア事件をめぐり、ねつ造されたメールを公表して鬼の首を取ったかのように自民党を追及した「偽メール事件」があったからだろう。

 僕は当時、この事件をよく取材したが、偽メールの仲介者はジャーナリストの端くれで、その人物の名前を出した時に、週刊誌の編集者たちが「あんな男のことは信用できないよ」と口を揃えた。実際、それは信用できないメールだった。

 しかし、今回は当時の事件とは相当違うと思う。もしでたらめの証拠ならば、籠池氏は安倍さんに喧嘩を売ることはなかっただろう。

 今回、寄付者名簿と振込票を公表した菅野完さんに対し、籠池氏はずいぶん信頼を寄せているようだ。菅野氏の取材を受け、菅野氏を通して発言をすることもあった。僕は菅野氏と会ったことはないが、彼の著書「日本会議の研究」は、かなり取材をして執筆していると感じた。その点を考えると、民主党の偽メール事件を仲介したジャーナリストとは随分違うと思う。

 籠池氏は、100万円の寄付を公表した時点で、証人喚問までのシナリオは想定していたのではないか。

 今回の証人喚問で、安倍さんが籠池氏に100万円の寄付をしたことについて、白黒をはっきりと立証することはできなかった。

 両方に証拠が出なかった時は、安倍さんとしてはイメージが悪いだろう。「やはり100万円の寄付はあったんじゃないか」という疑惑が残ってしまう。ただ、昭恵夫人が森友学園に100万円の寄付をするということは、法律的に何の問題もない。