日銀の黒田総裁は再任されることになったが、異次元緩和の出口戦略は未だ示していない(写真:ロイター/アフロ)

 2月16日、黒田東彦日銀総裁を再任させる人事案が国会に提出された。

 失業率は3%を割り、有効求人倍率も12月は1.59倍まで上昇している。景気拡大も、1965年11月から70年7月まで57カ月間続いた「いざなぎ景気」を超えた。安倍首相はこういった現状を踏まえ、黒田総裁について「手腕を信頼している」と繰り返し述べた。

 しかし、大きな問題がある。安倍首相は、2013年春からアベノミクス「3本の矢」、つまり大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略を打ち出しているが、財政が悪化の一途をたどっているということだ。

 中でも目玉は金融緩和だった。日銀は2013年4月に「異次元緩和」をスタートさせた。「物価目標2%」を掲げ、デフレ脱却に舵を切ったのである。

 ところが、その目標はいまだに達成できていない。それどころか、目標達成時期を6回も先送りしてきた。

 プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化についても、達成時期を先送りしている。内閣府は、2025年度に均衡させると試算していたが、2年遅れの2027年度にずれこむと発表した。実際は、達成の目途は立っていない。国の借金も1100兆円に迫っている。

 日銀は異次元緩和の実施により450兆円もの国債を抱えてしまったが、目標を達成できない上に出口が全く見えないのである。一体どうすればいいのか。

 これに対して、野党からはあまり批判の声が聞こえてこない。なぜかといえば、日本の政党は、経済政策の観点でいうとすべてがリベラルだからである。

 本コラム「消費税の引き上げなんてどうでもいいことだ」でも述べたが、欧米では、大半の国で「保守」と「リベラル」という二大政党がある。

 保守は、経済でいえば自由競争を促し、自国の利益を強く守る立場を取る。政府はあまり市場に介入せず、市場の競争原理を尊重する「小さな政府」となる。保守は財政再建、つまり財政の引き締めを図る。

 一方で、リベラルは格差をなくすために規制を設け、社会保障や社会福祉にお金を使う「大きな政府」を目指す。すると、財政赤字が膨らみ、次は保守が政権を取る。この二つの政党が交互に政権を担うことで、社会はバランスを保つのである。

 日本の場合、自民党は保守政党と言っているが、経済政策ではリベラルだ。野党の大半は、さらにリベラルだ。つまり日本の政界に保守という存在がほとんどないから、財政を引き締めようという議論が広がらない。だから、日本の借金はどんどんと膨れあがっているのである。

 日本では、「利益の分配」についてはどの政党も自分たちの働きを強調するが、「不利益の分配」には一斉に口をつぐむ。

 さらに言えば、日本のマスコミも総じてリベラルである。朝日新聞や毎日新聞はリベラルで、本来であれば読売新聞や産経新聞は保守の立場である。しかし、読売や産経は「安倍応援団」であるから、今は「財政を引き締めよ」と強く主張しない。例えば、消費増税の議論が持ち上がっても、ほとんどのマスコミは反対する。

 つまり、日本には、政界にもマスコミにも保守がほとんどいないのである。