トランプ大統領が恐れているものは、中間選挙敗北後の弾劾だ

トランプ大統領はオバマ政権とは異なる外交戦略に突き進んでいる(写真:AP/アフロ)

 もう一つ、気になる話がある。トランプ米政権が、今後5~10年間の核戦略の包括的指針となる「核戦略見直し(NPR)」を発表した。核兵器の必要性をアピールし、核兵器の使用条件を緩和したのである。

 特に注意すべきは、核兵器以外での攻撃を受けた場合でも、核の使用を検討する可能性があるということだ。つまり、オバマ前大統領の「核兵器のない世界」をつくる路線から大きく変えたわけだ。

 第二次世界大戦後、核兵器の使用はタブーとされてきたが、ここへ来て米政権が「使用する」という選択肢を設けたことは、無視できない点である。

 今、ロシアや中国が核戦力を増強している。北朝鮮も核開発を進めている。今回公表したNPRは、それらに対抗する措置だと言われているが、本当の目的は違うと思う。

 僕は、トランプ大統領の演説を聴いていると、彼が目指すのは「冷戦構造の再現」ではないかと感じている。

 とは言え、冷戦構造を復活させようとしてもうまくはいかないだろう。なぜならば、欧州各国はほとんど「反トランプ」を主張しているからだ。アジアの中でも、反トランプの立場をとっている国は多い。

 世界で最も「親トランプ」である日本はどうか。僕は、日本政府のある幹部に、「トランプ大統領は何を考えているんだ。こんなことをやっても、米国はむしろ世界中から反発を受け、孤立するだけではないか」と言った。

 すると彼らは、「トランプ大統領の頭の中は、99%中間選挙のことしかない。中間選挙に勝つためには、緊張状態を高めておいた方が有利になる」と答えた。具体的には、北朝鮮、中国、ロシアに対する対応を強化することである。トランプ大統領には、そのような思惑があるのではないか。

 今年11月の中間選挙は、上院は勝つが、下院では負けるのではないかとの憶測が広がっている。トランプ大統領は、強い危機感を感じているからこそ、今後ますます北朝鮮、中国、ロシアとの緊張状態を高める動きを強めていくのではないかと思う。

 トランプ大統領が最も恐れているものは何か。確かに中間選挙に勝つことは望んでいるが、2期目も大統領を続けることを望んでいるわけではないようだ。しかし、中間選挙に負けると、自身のロシア疑惑について弾劾を受けることを恐れているのではないかと思う。

 つまり、保身のために冷戦構造の再現を目指しているというわけだ。

 ロシア疑惑をめぐる追及が強まり、「米国第一主義」で世界から孤立し、トランプ大統領は国内外で不利な状況に追い込まれつつある。最大の試練となる中間選挙に向けて、思慮を欠いた行動に出ないことを祈る。