アメリカの歴代大統領は、製造業復活に失敗し続けてきた

 実はこの内部対立は、アメリカが長年抱えていた問題でもある。

 例えば、ロナルド・レーガン大統領の時代も、イギリスのマーガレット・サッチャー首相、日本の中曽根康弘首相とともに、製造業を伸ばそうとしていた。しかし、結局失敗して金融を優先してしまった。

 この失敗はレーガン大統領だけに留まらない。その後の大統領も製造業の復活を試みたが、最終的に失敗して金融中心になってしまった。この積み重ねによって金融市場が過熱してしまい、2008年にはリーマン・ショックが起こってしまった。アメリカ人の不満はこうしたところから蓄積している。だからこそ、製造業の復活に賭けたい気持ちも理解できる。

 長年失敗し続けてきた製造業の回復を、トランプ大統領は本当に実現できるのか。これは非常に難しい問題だ。

 23日、トランプ大統領は「日本は、アメリカの車の販売を難しくさせているのは問題だ」と批判していたが、これも筋が違う。アメリカは、日本から輸出される自動車には2.5%の関税をかけているが、日本がアメリカ車を輸入する場合の関税はゼロなのだ。つまり、アメリカの方が日本に輸出しやすいはずだ。

 菅義偉官房長官も、「アメリカは関税をかけているが、日本はかけていない。それなのになぜ日本を批判するのか」と反論していた。

 では、なぜアメリカ車は日本に入ってこないのかというと、大きな理由はサイズが大きく、日本の道路に合わないからだ。燃費などの性能も、日本のクルマの方がはるかに良い。関税の問題などではない。

 トランプ大統領は、このようにまだ分析の甘いところがたくさんある。

パリ協定を形骸化させてはならない

 もう一つ、大きな問題がある。トランプ大統領は24日、オバマ政権が地球温暖化対策として導入した「気候行動計画」を覆し、化石燃料の使用を増やすと発言した。

 オバマ政権時代、すべての国に温暖化対策を義務付けた「パリ協定」に基づいて、アメリカは「2025年に温室効果ガスを05年比で26~28%削減する」という目標を決めた。この実現には大変な努力が必要だ。

 ところが、トランプ大統領は、パリ協定を無視しようとしている。オバマ政権時代に中止していた2つのパイプラインの建設再開を即断した。カナダからテキサス州に原油を輸送する「キーストーンXL・パイプライン」と、ノースダコタ州からイリノイ州までつなぐ「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設だ。これによって鉄鋼業の再興や関連産業で雇用が増えると自慢げに語っている。

 だが、石油や石炭の使用増加は二酸化炭素の排出を増やすことにつながるわけで、時代の流れに逆行している。国際的な取り決めを反故にするような決断は、世界のリーダーたる存在のアメリカが取ってはいけない選択だ。アメリカが無視するようになれば、他国も環境対策を軽視する可能性がある。そうなると、パリ協定自体が形骸化しかねない。

 このように、トランプ大統領の発言には様々な矛盾や問題が見える。実際のところ、それらをどのようにしていくのか。「独りよがり」の政策では、切り抜けられるものではない。