(写真:ロイター/アフロ)

 1月20日、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任した。大統領就任演説を聞いて僕がまず感じたのは、彼は被害者意識の塊だということだ。

 例えば、演説の中にこんな箇所がある。1月21日付の朝日新聞に掲載されたトランプ大統領就任演説全文から抜粋する。

 「何十年もの間、私たちは米国の産業を犠牲にして外国の産業を豊かにしてきました。自国の軍隊の悲しむべき疲弊を許しておきながら、他国の軍を援助してきました。私たち自身の国境を守ることを拒否しながら、他国の国境を防衛してきました。そして、米国のインフラが荒廃し、劣化する一方で、何兆ドルも海外につぎ込んできました」。

 トランプ大統領は「アメリカは被害者だ」と強く訴えているのだ。

 さらに、こんなふうにも言っている。

 「私たちは、首都ワシントンから権力を移し、国民の皆さんに戻すのです。あまりに長い間、この国の首都の小さな集団が政府からの恩恵にあずかる一方、国民はそのつけを背負わされてきました。ワシントンは栄えましたが、国民はその富を共有しませんでした」

 つまり、グローバリズムによって、一部の企業やエスタブリッシュメントたちが非常に豊かな生活を営むようになったが、そのために多くのアメリカ人が貧しい生活に苦しんでいるということだ。工場が閉鎖され、雇用が失われ、賃金は安くなり、たくさんのアメリカ人が大きな格差による苦しみに耐えられなくなったことを示している。

 トランプ大統領は、こうも言っている。

 「私たちが守るのは2つの単純なルールです。米国製品を購入し、米国人を雇用するということです」

 中国や日本、メキシコなどから安価な製品が輸出されてきて、アメリカは「モノを買わされてきた」というのだ。アメリカ人が働く工場がどんどん海外へ出て行ってしまった。だから、工場をアメリカに取り戻し、アメリカで作られた製品をアメリカ人が買うことで、雇用を創出していこうというのだ。

 それに賛同するアメリカ人たち、主にプアホワイトと呼ばれる白人の低所得者層がトランプ氏を大統領にした。

 しかし、本当にそんなことはできるのだろうか。