先日、トヨタ自動車がシリコンバレーに置くメイン研究所のトップに取材をしたところ、興味深い話を聞くことができた。これまでトヨタは、フォードの開発した自動車を進化させることに注力してきたが、今はだいぶ風向きが変わってきたという。

 2015年12月12日、温室効果ガス削減に関する国際的なルールを定めた「パリ協定」が採択された。これによって、CO2を出すエネルギーはできるだけ止めるという風潮が強まり、自動車業界はCO2を排出するガソリン車やディーゼル車から、電気自動車(EV)やハイブリッド車へ軸足を移していったのである。

 早くも中国や欧州各国は、ガソリン車やディーゼル車の販売を徐々に廃止し、EVへシフトしていくことを表明している。

 「こんなに早くEV化が進むとは思わなかった」と彼は言った。トヨタも大急ぎでEV開発を進めなければならない。

 17年11月、トヨタは大規模な人事異動を行った。目的の一つは、EVの開発体制を整えること。もう一つは、長期的な戦略を打ち出すことである。

 今月12日、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が自動運転車の走行許可を米運輸省に申請したという発表があった。19年には実用化をする計画だという。

 これについてトヨタの研究所のトップは、「自動運転車が本格的に普及するのは、10年くらい先だと思っていた」と話していた。

 自動運転車が実用化し、カーシェアリングが普及すれば、自動車の所有者は今より格段に減るだろう。当然、自動車の販売台数も減少する。「15年先には、トヨタは自動車メーカーではなくなるだろう」と彼は語っていた。

「新しいものが理解できない」では生き残れない

 パナソニックも大きな岐路に差し掛かっている。先日、僕はパナソニックの馬場渉氏を取材した。彼は縦割り構造を打ち壊し、新規事業を創出する新しい組織の幹部に就いた人物である。就任会見では、縦割り構造の改革を「『タテパナ』から『ヨコパナ』にする」というユニークな表現をした。

 取材の中で彼は「パナソニックは、もはや総合家電メーカーとしてはやっていけないだろう」と言った。日本は米国と同様に人件費が高いから、総合家電メーカーでは韓国や中国に負けてしまう。そこからどう脱皮するか。

 パナソニックでは今、「HomeX(ホームエックス)」という新しい住空間をつくるプロジェクトを進めているという。従来は、居住者が自分で家電を設定し、リモコンで操作し、快適な状況をつくるように、居住者が住居や家電に合わせてきた。

 一方「ホームエックス」は、住宅や家電が住居者に合わせるという仕組みである。例えば居住者が帰宅する前に、エアコンや床暖房、住宅が連携して自動的に快適な空間を作りだしておく。

 この「ホームエックス」のプロジェクトが昨年4月に打ち出された時、社内の中堅幹部たちの8割はその意味が理解できなかったという。しかし、馬場氏は「これを理解できなければ未来はない」と説得して、今プロジェクトを進めている。

 もう一つ、大転換期を迎えているのは金融業界だ。以前の記事「構造不況業種となった銀行に活路はあるか」でも触れたが、昨年10月からメガバンクが大規模なリストラを発表している。

 日銀のマイナス金利政策の影響で、金融機関は利益が出しにくくなった。さらには国内市場の縮小により各企業が積極的に設備投資をしようとせず、資金需要が伸びにくい。こういった理由で金融機関の収益が悪化していく中、メガバンクはデジタル化によって業務効率の改善をしようと舵を切ったのである。