韓国とともに「子どもっぽい行動」に出た日本

 どのタイミングで帰任させるのか。両国のどちらかが歩み寄らなければ解決は難しい。だが、昨年末に行われた慰安婦問題をめぐる日韓合意に対する世論調査では、合意の破棄を求める人が59%にも上り、維持を唱える人(25.5%)の倍以上という結果になった。

 韓国議会は昨年12月、朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追案を可決、朴氏の大統領権限は停止されており、トップ不在の状況だ。韓国では2017年内に大統領選挙が控えている。その点を考えると、ポピュリズムを重視して日本に対して厳しい態度を取らなければ、選挙に勝つことはできない。大統領選挙に立候補すると思われる前国連事務総長の潘基文氏も、この問題について沈黙している。

 候補の1人とみられる最大野党「共に民主党」の禹相虎(ウ・サンホ)院内代表は、「日本政府が出した10億円を返すべきだ」と訴えている。同じく韓国の野党からは、「加害者である日本が韓国政府に対して、我が領土にある少女像を撤去しろというのは、盗人猛々しい」という発言まで出している。つまり、韓国政府も地方自治体も、日本に対して謝罪したり歩み寄ったりする可能性は極めて低いと言える。

 では、韓国からの歩み寄りなく日本が大使を帰任させるだろうか。これも難しい。韓国が何ら措置を講じないままに大使を帰任させると、日本政府が少女像の設置を認めたと捉えられる可能性があるからだ。双方身動きが取れず、大使が不在という状況が続くということは、一種の国交断絶に近くなる。これを考えると、日本の判断は、大変な失敗だったのではないかと僕は思う。

 大使を帰任させるという決断の背景に、帰任するタイミングをきちんと考えていたのかが疑問だ。僕が言う「失敗」とは、ここにある。このまま長引けば、北朝鮮への対応など、日本の安全保障上の問題も浮かび上がってくる。大使と総領事の一時帰国というのは、非常に行き過ぎた選択だった。帰任させるきっかけを見通した上でやればいいのだが、日本政府は、帰任のきっかけまで考えていなかっただろう。

 では、大使の一時帰任は、誰が決めたのか。僕は、知り合いの何人かの自民党の政治家たちに「これはまずい判断だったんじゃないのか」と言ったら、みんな「その通りだ。まずいと思う」と言っていた。

 おそらく、これはごく一部の政治家、主に安倍晋三首相が決めてしまったのではないかと思う。それに対して、周りの幹部たちは「やめたほうがいい」と言えなかったのだろう。そこも重い問題ではないだろうか。

 今、韓国では、日韓合意を白紙に戻すという動きがあるという。「最終的かつ不可逆的に解決した」との合意を、いとも簡単に撤回しようとする。非常に子供っぽい考えだ。もし政権が変わったとしても、かつての政権で交わした約束を簡単に撤回しようとする韓国は、世界の常識が通用しない国なのだ。確かに、世論に押されて少女像の設置を許してしまうという韓国のやり方は、あまりにも子どもっぽい。ただ、帰任のきっかけをきちんと考えずに大使や領事を一時帰国させてしまったとしたら、日本の対応にも子どもっぽさを感じざるを得ない。

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