
2018年12月に出入国管理法改正案(改正入管法)が国会を通過。19年4月から施行される。僕がこの問題について最も違和感を覚えたのは、どのマスメディアも問題の本質について報じていないことだ。
国会審議の時間が衆議院で17時間、参議院で20時間と短かかった点は指摘している。しかし、なぜ短時間だったのか、なぜまともに審議もされなかったのかについては、追及していないのである。
改正入管法について、山下貴司法相は制度の内容をほとんど理解しておらず、野党の質問に対して「検討中である」との答えを連発した。安倍晋三首相も、下から上がってくる文書を読み上げているだけで、全体像を把握しているとはとても思えなかった。
つまり、担当大臣も、総理大臣も、外国人労働者の受け入れ問題、あるいは入管法改正について、十分な理解がないまま審議が進められたうえ、審議の時間も限りなく短縮されていたのである。
法務省はそもそも入管法改正について消極的だった。外国人労働者の状況、人手不足に陥っている現場をほとんど把握していない。どの分野でどのような人材がどれだけ不足しているのか、分かっていないのである。
ところが、官邸からの強い要請により、法務省は対応せざるを得なかった。
なぜ、官邸は入管法改正を急いだのか。全国の中小企業が深刻な人手不足の状況を訴えたからだ。このままでは倒産する企業が増加するとみた官邸は、外国人労働者の受け入れ拡大を急務と捉えた。
しかし、ここに難しい問題があった。安部首相をとりかこむ「安倍応援団」は、基本的に外国人労働者の受け入れ拡大に強く反対している。さらに言えば、移民には断固として反対である。
本来ならば、こういった対策を講じるのにふさわしいのは、労働現場をよく分かっている厚生労働省だ。しかし、厚労省がこの問題を扱うと、外国人労働者を受け入れるときに、「労働者」ではなく「人」としてどう対応すべきか、例えば福祉、社会保障、教育等の問題を考えざるを得ない。となると、厚労省から見れば、まさにこの問題は「移民政策」なのである。
移民の問題と指摘されることは、安倍首相にとっては絶対に避けたい事態だ。ここで厚労省は、外国人労働者問題の担当には選ばれなかった。
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