こうした現実を前に、事業の内容や将来性を理解して株を買ってくれる投資家と、短期の儲けばかりを狙い売買を繰り返す投資家。どんな投資家にでも経営の議決権を平等に与えるべきなのか。そんな思いまで浮かんできます。

 企業の中長期的成長という命題と、株主の在り方は新たな課題を突き付けているといえるでしょう。

個人株主に長期保有促す

 株主も大切にしながら中長期的な成長を保ち、ステークホルダーにも支持される形で、企業価値を高めるにはどうすればよいのか。

 そこで私の最近の新しい考えは、「長期投資家」と「マネーゲームをしている投資家」を分けて考えること。今や、個人株主といってもネットで短期間に売買を繰り返すネットトレーダーも多く含まれています。

 株主や投資家といっても利益を得る「受益権」を追求する人と、企業の経営を見守り、時に経営に意見を伝える「統治権」を重んじる人。それぞれの狙いや思いがあります。ですから、統治権を重んじる長期投資家を増やしていくことが1つの答えになりそうです。

 トヨタ自動車は2015年、個人投資家向けに元本保証型の新種株を発行しました。これが1つの答えといえるでしょう。この新種株は投資額の元本を保証する代わりに、5年間は保有することが基本的な条件となっています。

 個人向け特殊株式の使途は、新事業の開発ということになると思います。トヨタ自動車でいえば、5年間を使って、今までにない新技術や新車を開発しますよというメッセージを発しています。オリックスも同様な考えができます。クルマのように形は見えませんが、5年間かけて、ゆっくりと投資させてもらいます。もちろん、過去にオリックスがどのように事業を育ててきたかというトラックレコードを示して、投資家の方に納得してもらうことが大切です。そこから中長期で支持してくれる株主が集まってくれると考えています。

 また、米国企業では上場後も、創業者が議決権を多く持つ種類株を発行して企業統治を保つといった取り組みがされています。議決権をもとに株式を分けるのはとてもいいアイデアで、こうした考えをぜひ議論していくべきでしょう。マネーゲームをしている投資家にとって、議決権はどうでもいいわけです。中期、長期と投資する期間に合わせて、議決権の重みを増していけばよい。日本ではまだ種類株の発行は少ないですし、株主平等の原則というルールがまかり通っていますが、その概念を徐々に変えていくべきではないかと思います。

社員、株主、社会に支持されるリーダーになるには。
その全ての条件をまとめた必読書。

 本書は、オリックス シニア・チェアマンである宮内 義彦氏がオリックスグループでの長年の経験から、企業運営の在り方を様々な角度から考え、企業経営論としてまとめた書籍です。

 激動する世界情勢や経済状況、次々と生み出される新技術など、現在の社会環境を踏まえた上で、特に新規事業や人材育成、株主対話といった項目に重点を置き、長期成長のために企業があるべき姿を探ってみました。

 安定的な組織の成長は、社員の仕事の幅を広げたり、働きがいを高めたりすることはもちろん、取引先との良好な関係を通じた新しい価値の提供、さらに地域社会への貢献と幅広い成果をもたらします。

 そのためには日々、どんな事を考えて、実践していけばよいのか。人材や組織、技術など多様な観点からその条件をまとめています。