リスクを取る社風を保つ

 大切なのは、リスクを取って頑張るという姿勢を社内からなくさないことです。成功の機会は少ないのに、何らかの理由でストップをかけ損ねたら、会社が損失を抱えてしまう。担当者には「とんでもないことをやった」と批判が飛び、責任を負わせることにもなるでしょう。そんな姿を見たら、社内の誰もがリスクを取らなくなってしまう。だからこそ、判断は経営陣に委ねてもらい、適切なところで「ご苦労さん。もっと別の面白いことを考えよう」と声をかけることが大事です。

 傷を広げないための撤退の話を先ずしました。

 では新規事業への参入の判断についてはどうでしょうか。私自身は単純に言いますと、面白そうなものはやろうという心構えが大切だと思っています。

 現場からは無手勝流に、様々な要望や意見が出てきます。それを踏まえたうえで、無理がない範囲で、まずは実際にチャレンジしてもらう。事業のアイデアが出るのは、きっちりとしたデータの裏付けを基に提案してくるよりも、「これは面白そう」という発想から始まることが多い。市場性があるからという考えではなく、面白いからやってみたいという感情が社員にも強いのです。

 その中で有望な事業やサービスをいかに早く見極められるかどうか。マネジメントにはそれが求められています。経営判断がぶれていると、有望でもない事業に固執して、「もうひと頑張りしてみよう」と誤った判断をして、時間と資金と労力を無駄にしてしまいます。前述しましたが、後戻りすべきタイミングで、さらに前進してしまうと、傷が深くなってしまいます。

 実は、新規事業こそ、事業計画がどの程度真剣に練られたかを見極めることが第一の関門です。新規事業の担当者による「3年経ったら社内基準の利益を超えます」といった事前のプレゼンテーションはいくらでもできます。5年先のことなど議論しても、見通すことなど難しいでしょう。

5年先を語るより、離陸の見守りを

 実際には、新規事業を担当する社員も、1年目で本当に売り上げが立つのかとなると、自信がなく、不安を抱えているのが実態です。離陸が一番難しいのに、5年先まで語っていても、実感がこもらない。例え予想どおりに動いているようでも、少なくても3年は事業の推移を見ないと、先の判断もしにくい。

 事業計画の役割は、細かい点を見て、担当者に緊張感を持たせるためではありません。むしろ先が見えないまま続けていると、成長には限界があり、事業が長く続かない点を自覚してもらうことにあります。その上で、軌道に乗り始めたら、「もっと人をつけるから、どんどんとやれ」というようにサポート体制を整える。成功は大きく、失敗は小さく、というのが原則です。しかも、一度取り掛かったら、放りっぱなしにしない。経営幹部が忘れずに目を配って、どのような状況になっているのかを時として細目を聞き取りすることも大事です。

 最後にオリックスの例に沿って成功へのポイントをまとめたいと思います。

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