近くて遠い存在の隣人、中国。日本の25倍の国土に、56民族14億人がひしめき合っている。この巨大で多様性に富んだ隣人は、今なお猛スピードで変化を続けており、その実像はなかなかとらえることができない。北京にある経済金融系トップの重点大学に在籍する日本人経済学者の西村友作が、その稀有な立場ならではの視点や情報を基に、専門の経済・金融・ビジネス分野だけにとどまらず、研究・教育現場の現実、流行や社会の変化など、一国の顔である首都から中国のスッピンにせまる。
シリーズ
西村友作の「隣人の素顔」~リアル・チャイナ

67回
-
中国、「国家データ局」開設の狙いは? 加速するデータの利活用
2023年3月の全国人民代表大会(全人代)において「党と国家機構改革方案」が採択され、国務院の機構改革の一環として「国家データ局」の新設が決定した。国家データ局が担うのが、データを利用した「発展」だ。14億人の人口を抱え…
-
急回復する中国のサービス消費。インバウンド需要の期待も高まる
中国の街に活気が戻ってきた。朝夕のラッシュアワーでは大渋滞が起こり、人気レストランには大行列ができている。万里の長城や天安門広場などの観光地は旅行客であふれ返り、街中でも団体観光客を乗せた大型バスをよく見かけるようになっ…
-
北京のタクシー運転手が好むのはEVか、ガソリン車か?
冬場は零下10度にもなる北京。EVタクシーの悩みは航続距離が短くなってしまうことだ。自動車会社や電池会社など中国の製造業者にとっては追い風だが、逆に、EVに切り替わったことで影響を受けている業界もある。タクシー業界だ。
-
中国、3人目出産容認でも人口減少。背景に「結婚しない層」の増加
中国の人口がついに減少へと転じた。中国国家統計局によると、2022年末の総人口は14億1175万人となり、21年末から85万人減少した。過去61年間人口が増加し続け、世界最大となった人口大国が歴史的転換点を迎えた。
-
ゼロコロナ政策大転換の北京で起きていたこと
中国政府はコロナ対策に関する大幅な緩和措置を発表。感染者に対する施設での隔離を廃止し、無症状や軽症者の自宅での隔離を認めた。また、高齢者施設や医療機関、学校など限られた一部の施設以外では、PCR検査の陰性証明や健康コード…
-
日中首脳会談は関係改善への第一歩となるか
2022年11月17日、日本の岸田文雄総理大臣と中国の習近平国家主席がタイ・バンコクで会談を行った。両首脳は、日中両国の「建設的かつ安定的な関係」の構築に向けて、首脳レベルを含めたあらゆるレベルで緊密に意思疎通をしていく…
-
経済発展を最重要任務に位置付けた中国共産党の課題
今回の報告で新たに出てきたワードが「中国式現代化」だ。習総書記は、中国式現代化の一つとして「全人民の共同富裕を目指す現代化」と説明した。また、「中国式現代化の本質的な要請」でも、「高質量発展(質の高い発展)」および「共同…
-
混迷の中国不動産市場、「保交楼」政策で救えるか?
今年7月以降、建設工事の停止で引き渡しが遅れている住宅の購入者によるローン返済拒否の動きが中国各地で広がっている。これを受け、中国政府は緊急対策へと乗り出した。キーワードは「保交楼(不動産の引き渡し保証)」。手法の一つが…
-
競争激化で淘汰が進む中国の生鮮EC。商品力と資金力で明暗
7月28日、中国生鮮EC(電子商取引)大手の「毎日優鮮」は、最短30分の宅配サービス「極速達」の停止を発表した。テンセントをはじめとする有力機関投資家から累計100億元(約2000億円)を超える巨額の資金を獲得し、昨年6…
-
消費喚起につながるか?中国の「夜間経済(ナイトタイムエコノミー)」
中国政府によるナイトタイムエコノミーの活性化への取り組みは、20年の新型コロナウイルス感染症の大流行で激減したが、ここにきて再び活発になってきた。背景にあるのが新型コロナ再燃による消費の低迷だ。特に都市部で消費が回復すれ…
-
中国の不動産市場は規制緩和で復活するか
2021年下期から低迷が続く不動産市場のテコ入れに中国政府が躍起になっている。2020年以降、バブル抑制を目的に不動産規制を強化してきたが、市場の急激な冷え込みを受けて、今年に入り緩和方向へと舵(かじ)を切った。
-
試練を迎えた中国経済 インフラ投資頼みの景気活性化は限界か
新型コロナウイルスの感染拡大で、中国経済が急減速に見舞われている。人やモノの移動が制限され経済活動が急速に収縮したことで、消費や生産などの経済指標は軒並み悪化している。最も影響が大きかったのが、中国屈指の経済都市である上…
-
「共同富裕」で広がるデジタルチャリティーは新たな成長のチャンス?
「共同富裕」。毛沢東が最初に提唱し鄧小平も用いてきた以前からある言葉だが、2021年8月に開催された中国共産党中央財経委員会で習近平(シー・ジンピン)総書記が改めて実現に向け強い意欲を示したことで、にわかに注目を集めた。…
-
東のデータを西で処理。中国デジタル国家計画「東数西算」
中国政府が『第14次五カ年デジタル経済発展計画』で「実施を加速する」との方針を示していた「東数西算」プロジェクトが正式にスタートした。「東数西算」の、「東西」は地域を、「数」はデータを、「算」は計算能力、データの処理能力…
-
中国地方都市に破綻リスク。4割超が人口減、不動産暴落も
過疎が進む中国の地方都市で何が起こっているのか。昨年末には中国東北地域の黒龍江省に位置する鶴崗市が、財政再建計画の実施を理由に職員募集を中止すると突如公表した。この問題を詳しく見ていくと、不動産と財政再建計画との深い関わ…
-
中国でEVが急成長、激安車登場、日本にバスやトラックも輸出
中国で新エネルギー車(新エネ車)販売が加速している。中国汽車工業協会が1月12日に発表したデータによると、2021年の新エネ車の新車販売台数は前年比2.6倍増となる352.1万に達し、初めて300万台を突破した。新車全体…
-
「デジタル人民元」は中国社会に広まるのか?
中国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)、通称「デジタル人民元」の正式発行に向けた動きが加速している。2022年1月4日、デジタル人民元アプリはこれまでの「測試版(試験運用バージョン)」から「試行版(試用バージョン)」へと…
-
ドルの背中は遠い? 中国・人民元が「国際通貨」になるための条件
中国の名目GDPはすでに米国の約7割にまで高まっており、国際貿易取引では米国と比肩する規模に達している。実体経済における存在感が高まる一方で、国際金融面における中国のプレゼンスは低い状況が続いてきた。その象徴的な事例が人…
-
感染再拡大でも、「ゼロコロナ」を目指す中国の本気度
新型コロナの感染状況を気にしながら生活を送る日々が再び始まった。市中感染の拡大を防ぐためには、迅速かつ正確な情報公開を通じ、国民の予防意識を高める必要がある。政府は、感染者情報、病院や交通機関などの公共部門のデータを日々…
-
恒大ショックで中国経済は危機に陥るのか?
中国の不動産大手「中国恒大集団」の経営危機がにわかに注目を浴びている。2021年9月20日、同社のデフォルト(債務不履行)懸念を受け株価が急落。ショックは欧州、米国、そして連休明けの日本にも波及し、世界同時株安の様相を呈…
WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
おすすめのシリーズ
-
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たや…
-
徹底予測2021年 底打ちか奈落か
日本経済の節目の年として幕を開けた2020年は、誰もが予想できない最悪の1年となった。すべての始まりはコロナ禍だ…
-
クルマ大転換 CASE時代の新秩序
総付加価値額が450兆円ともされる自動車産業の構造が変わり始めた。GAFAやEVスタートアップ、ソニーなどが新た…
-
不屈の路程
話題の経営者や気鋭の起業家はいかにして自らの経営を確立するに至ったのか。そこにたどり着くまでの道のりは決して順風…
-
菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済
ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
-
1000年企業の肖像
日本は創業100年以上の企業が多くあり、世界一の長寿企業大国として知られる。その中には創業1000年を超えると伝…
-
10 Questions
いま、世の中で起こっていること。誰もが知りたいと思っていること。でも、ちゃんと理解できていないこと。漠然と知って…
-
河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは…
-
ファクトフルネス思考
「データを基に世界を正しく見る習慣」を紹介した書籍『ファクトフルネス』は、日本で90万部を超えるベストセラーとな…
-
大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」
日本の読者にとって欧州のニュースは遠い国々の出来事に映るかもしれない。しかし、少子高齢化や低成長に悩み、企業の新…
-
グルメサイトという幻
食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメ──。外食店探しに欠かせない存在となったグルメサイトの地位が揺らいでいる…
-
フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える
この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつか…
-
ファストリ、異次元の経営
コロナ禍の混乱からいち早く抜け出したファーストリテイリング。破綻が相次ぐアパレル業界にあって、なぜユニクロだけが…
-
テスラが仕掛ける電池戦争
日本でも2030年代半ばに新車販売でガソリン車をゼロにする方針が打ち出されるなど、各国の環境規制強化により普及段…
-
70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
全8回