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北京のフーマー楽成店

「今後10年、20年で、eコマースという言葉は消え、『新零售』だけになる」

 アリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は2016年10月、同グループのクラウドサービス企業「阿里雲計算公司」が主催するカンファレンス「杭州・雲栖大会」の講演でこう予言した。

 そして新しい小売り(ニューリテール)を意味するこの「新零售」について、同講演で馬雲氏はこう説明した。

「オフライン企業はオンラインへ、オンライン企業はオフラインへと歩み寄り、それを近代的物流でつなぎ合わせることで、初めて真の新しい小売りが実現できる」

 つまり、リアルの伝統的小売り店舗とデジタル空間のeコマースを、最先端の物流技術を使って融合させるという次世代の小売りモデルだ。この「新零售」の急先鋒が、アリババが展開するスーパーマーケット「盒馬鮮生(フーマー)」である。

 18年12月現在、北京では19店舗が営業しているが、その多くが都心ではなく郊外に位置している。デジタル世代の若者をメインターゲットと考えると、不動産価格が高く彼らがなかなか住めない都心ではなく、郊外を中心に店舗展開するのは理にかなっている、といえよう。

最短30分で届く生鮮食品

 生鮮食品の購入は店舗から3キロメートル以内であれば、スマートフォン(スマホ)で注文後、最短30分で届ける。周辺に対応できる店舗がない場合でも、生鮮食品以外の商品ならば翌日配送が可能だ。

 専用のスマホアプリをダウンロードして登録する必要があるが、アリババが運営するeコマース「タオバオ」もしくは決済サービス「アリペイ」のユーザーであれば、本人認証だけで完了する。

 我が家のそばに店舗がないため、友人宅で生鮮食品を注文してみた。注文してから実際に受け取るまでに要した時間は40分23秒。申し分ないスピードだ。

 速さのカギは店舗にあった。

 私が足を運んだのは北京東三環路の地下鉄「双井駅」付近に位置する楽成店。店内に入るとまず目についたのが、天井に張り巡らされたレール、そして専用のバッグを片手に店舗内を走り回る店員だ。

 オンラインから注文が入ると店員は専用端末に表示された商品を素早く探し出し、バーコードをスキャンしてバッグに詰め込む。ピックアップが完了し所定の位置にバッグをセットしボタンを押すと、レールを伝ってバックヤードへと吸い込まれていく。

 バックヤードでバッグから発泡スチロールの箱に詰め替え、ベルトコンベアを使って配達員が待つフロアに送る。配達員は指定された荷物を持つと、電動バイクの荷台にセットして配達へと出かける。まるで「物流センター」の様相だ。これが配達のスピードアップを実現している。